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京都大学をささえる人びと

2020年春号

京都大学をささえる人びと

ユーザー目線で思考し、安全で便利な情報環境を築く

石橋由子さん
情報環境機構企画・情報部情報基盤課 課長

パソコンやスマートフォンが普及し、学内外・日時に関係なく情報にアクセスできる今、情報ネットワークや端末システムの整備は大学の運営には欠かせない業務だ。情報環境機構は2005年の設置以降、利用者が安心して学習や研究活動ができるよう、高い安全性と利便性を備えた情報環境の構築・運営に努めている。学内の情報システムを技術的な立場から支えている、情報基盤課の石橋由子さんにお話をうかがった。

京都大学には教職員・学生の目線で考えられた、さまざまな情報システムが整備されている。たとえば、2013年に導入した学習支援システム(PandA)で、教員は課題の出題や小テストをウェブで実施できるようになり、学生は課題を提出したり授業で配付される資料を簡単に入手したりできるようになった。かゆいところに手が届くサービスをウェブから受けられるため、利用者の好評を博している。

「ユーザー目線で思考して、システムを構築することが大事。主役はシステムを利用する学生・教職員の方がたですから」。石橋さんはベテランの風格を身に纏いながら、ときおり少女のようなチャーミングな笑顔をのぞかせる。現在、情報基盤課は30名を超える情報系の技術職員が在籍。職場は本部棟・学術情報メディアセンター北館と南館に分かれ、さらに学内のいくつかの部局にも常駐している。「昨年、教職員メールシステムを更新しましたが、新しいメールの利用を開始するためにはいくつか利用者側にご協力いただく必要があります。そのお願いのお知らせ後に、身近な部署を訪ねて、こちらの意図が伝わっているかを確認します。気づいてない方がおられるとすれば、それは私たちの伝え方や文章表現に問題があるかもしれない。言葉一つ変えるだけで、伝わり度合いは劇的に上がります。『誰にむけて・どのように』広報をすればよいかを吟味して、次の一手を打つようにしています」。

意識を高め、セキュリティレベルの向上を!

情報環境機構や情報基盤課内で定期的に研修会や勉強会を企画・開催している

情報セキュリティの責任を負う立場として、避けたいトラブルはコンピュータウイルスの感染や機密情報の漏えいだ。ユーザーのわずかな気のゆるみが大きな被害につながる可能性がある。情報の安全性の確保になにより大事なことは、ユーザーのセキュリティ意識を高めることだという。

「セキュリティを担当する前は、『京大はどんな最先端のウイルスに狙われているのだろう……』と不安に思いました」。日々、攻撃手法は多様化・複雑化しており、未知のウイルスもやってくる。しかし、利用するソフトウェアを最新の状態にしておく、IDとパスワードを正しく管理するなど、普段から注意することでセキュリティ事故に巻き込まれるリスクをかなり減らすことができる。

不要となったデータのこまめな削除を促すなど、日ごろから意識向上の啓発活動は欠かせない。「一人ひとりが注意力を高めることで、セキュリティレベルはぐっと上がります。機密情報は肌身離さず、トイレに行くときもパソコンを持っていってほしい(笑)」。

コミュニケーションをとおして信頼関係を築く

京都大学に就職して約30年。SEの立場から長年にわたり京都大学を支え、2年前に課長に就任した。対話することの大切さを実感し、部下との信頼関係の構築に多くの時間を割くように。

2016年に導入されたスーパーコンピュータシステム。大規模な科学技術計算に利用

それと同時に、長年の経験で培った教訓を部下に伝えることも管理職の使命。なかでも石橋さんが浸透させたいのは、人との直接的なコミュニケーションの重要性だ。「ほかの課や部局とやり取りする場合、便利さからメールを利用することが多い。もっと踏みこんでアプローチできるようになれば、それまでとは違った視界が開けます」。

その折にアドバイスしているのは、電話でアポをとり、直接出向くこと。実際に顔を合わせてみると、うまくゆかない原因は小さな誤解や行き違いであることが多いという。「対面で話をすることで、相手の考えも把握でき、こちらの想いも伝わります。パソコンの前で仕事をする時間が長い私たちも、一番大事なのは相手との信頼関係です。少しの勇気を持てば、乗り越える壁は意外に低いかもしれません。失敗を恐れずに成功を掴みにゆく集団にしたいですね。でもほんとうの失敗は、なにもしないことです」。盤石な組織がさらに強化されたとき、より堅牢な情報システムが構築されるに違いない。


いしばし・よしこ
1965年、京都市に生まれる。ソフトウェア会社でのシステムエンジニアをへて京都大学に就職。京都工芸繊維大学大学院修了、博士(工学)。

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