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2016年春号

輝け!京大スピリット

研究者として生きる
引っ込み思案の私の背中を押してくれたもの

吉村瑶子さん
大学院理学研究科 博士後期課程3回生

「ピンク色が好きなんです。発表スライドの背景色も実験室で着るクリーンスーツもピンク色を選んでしまう」と笑う吉村さん。

案内された宇治キャンパス内の実験室には、ピンクを好む吉村さんとは不釣りあいにも感じられる、無機質な金属製の機器がずらり。まるで工場のような殺風景な空間が吉村さんのフィールドだ。

吉村さんは、博士後期課程で優秀な研究成果をおさめた女性科学者に贈られる〈ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞〉を2015年に受賞。「研究者として評価していただいたことで、研究者として生きてゆく覚悟ができました」。

「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」授賞式のようす(写真提供 日本ロレアル株式会社)

研究対象は磁石。なかでも、S極とN極との境界の磁化のねじれた〈磁壁〉という領域が専門だ。磁壁の位置は磁場や電流で動かすことが可能。吉村さんと研究メンバーは、メモリへの応用をめざした磁壁移動に関する研究にとりくむ。その過程で、磁石表面の膜構造をくふうすることで、新幹線よりも速い時速450 kmで磁壁が移動することを発見。次世代メモリの高速化など、技術の前進が期待されている。「なんども実験をくり返しました。さしたる結果の出ない実験も多いなか、山ほどの実験結果のなかに速度変化を示すデータがあった。だいじなのは『このデータはすごいかも』とピンとくる直感力と知識です」。

2016年の春には生まれ育った奈良を離れ、関東地方の企業で研究者として働くことが決まった。幼少期はさみしがり屋で、幼稚園の送り迎えのたびに泣いていたという吉村さん。親元を離れる勇気がわかず、「関西で就職」と考えていたが、受賞や大学院での経験に後押しされて関東で働く決意を固めた。「大学院から京大に飛びこんで、レベルの高さにとまどいました。『2年間だけ』と腹をくくって、留学や学会発表に挑戦するうちに気づけば5年。思いきって外に飛びだせば世界はどんどんと拡がる。知らないままではもったいない。いまはそんな気持ちです」。

研究室の教授は、「磁壁といえば小野教授」といわれる方。「○○といえば吉村さん」と認められるオリジナルの研究テーマをみつけることが目標だという

趣味はマラソン。フルマラソンの記録は4時間50分。「走りましょう!」と化学研究所のメンバーをさそって、宇治川沿いを息抜きに走ることも

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