益川敏英 元基礎物理学研究所所長がノーベル物理学賞を受賞(2008年10月7日)

益川敏英 元基礎物理学研究所所長がノーベル物理学賞を受賞(2008年10月7日)

前のページに戻る

益川敏英先生 ノーベル物理学賞受賞に際して

京都大学 総長 松本 紘

 本学名誉教授 益川敏英先生、高エネルギー加速器研究機構名誉教授 小林誠先生、シカゴ大学名誉教授 南部陽一郎先生のノーベル物理学賞受賞の一報に接し、大きな感激のうちにこの場をお借りしてまず心よりお喜び申し上げます。

 このたびの益川敏英先生と小林誠先生の受賞決定は、お二人が1973年に発表された、素粒子世界の粒子と反粒子の間の非対称性-CP対称性の破れ-を説明する理論、という大きな業績に対して与えられたものです。

  このお仕事は、益川先生と小林先生が、本学の理学部物理教室、すなわち昔の湯川研究室の直系の教室で、未だご両人とも助手でいらっしゃったときになされた ご業績であり、総長として大変誇らしく、ご両人のご努力と成果を称えると共に、重ねて心からのお祝いを申し上げたいと思います。

 この度 の受賞の対象となりました小林・益川理論は、今日の素粒子の「標準理論」と呼ばれている理論の成立に欠くべからざる役割を果たしました。単にCP対称性の 破れを説明するだけではなく、強い相互作用をする基本的素粒子のクォークが、3種類しか見つかっていなかった当時において、6種類以上存在しなければなら ないと予言し、事実その後の実験で6種全てのクォークが見つかった訳です。

 標準理論とは、朝永振一郎博士がノーベル賞を受賞された量子電気力学と同じゲージ理論という精緻な理論ということでありますが、そのような理論の中で、中間子を予言した湯川秀樹博士のように、6種類のクォークの存在を大胆に予言されたと伺っております。

 本学では、一昨年に湯川・朝永生誕百年の記念事業を行いましたが、今、その名誉ある流れの中で新たなノーベル賞受賞が決まり、誠に感無量であります。

 今回のご受賞は、本学の研究者、特に若手・中堅研究者に勇気を与えるものだと思います。今後もノーベル賞級の研究成果が本学から生まれることを期待しています。

 この益川敏英名誉教授の栄誉をばねに、本学はさらに学問の源流たる基礎学術の研究を着実に進めて行く所存でございますので、関係各位におかれましても一層のご支援ご協力を賜わりますようにお願い申し上げます。

 なお、本日は益川敏英名誉教授受賞決定の通知に接し、関係各位に直接お礼申し上げたく存じましたが、外国出張中であるため、書面にて取り急ぎご挨拶申し上げる次第です。