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福島県の避難区域を除く地域の現在と将来の被ばく線量率でのがんリスクは低い

2014年2月25日

 小泉昭夫 医学研究科教授、石川裕彦 防災研究所教授らの研究グループは、福島第一原子力発電所周辺の避難区域に接する自治体住民の平均被ばく線量調査を実施しました。今回の調査では、外部被ばく・内部被ばくの測定・評価や今後数十年の長期にわたる被ばく評価を行うとともに、発がん率を定量的に予測するなど、これまでにない新規の取り組みを行いました。

 本研究成果は、米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」の電子版(米国東部標準時2014年2月24日)に掲載されました。

研究者からのコメント

左から小泉教授、石川教授、原田浩二 医学研究科准教授、新添多聞 防災研究所研究員

 今後10年、50年にわたる放射性セシウムの減衰により、年間の平均被ばく量は、平常時の自然放射線や医療被ばく以外の被ばく限度である年間1ミリシーベルトを超えることはほとんどないと予測されます。この予測による2012年以降の生涯被ばく線量から推計される平均的な発がんリスクは、被ばく量の高い地域(2012年に年間2.51ミリシーベルト)で、白血病を除くがんは1.06%、女性における乳がんは0.28%でした。汚染食品の流通防止、汚染された森林への立ち入りの抑制、避難区域の設定により、住民の被ばく量は抑えられ、がんの著明な増加が防止されると考えられます。

本研究の新規性

  • 外部被ばく・内部被ばくを測定し評価した点
  • 今後数十年の長期にわたる被ばく評価をした点
  • 発がん率を定量的に予測した点

概要

 福島第一原子力発電所周辺の避難区域に接する自治体住民(福島県双葉郡川内村、相馬市玉野地区、南相馬市原町区)の平均被ばく線量を調査したところ、2012年で年間0.89ミリシーベルトから2.51ミリシーベルト(放射性セシウムの物理的減衰を考慮して)であり、日本人の自然放射線による年間被ばく線量2ミリシーベルトと近い水準でした。

 2011年3月の原発事故により環境中に放射性物質が放出され、周辺住民が避難しました。本研究では、福島第一原子力発電所から20kmから50kmに位置し、避難区域に隣接する3地域の住民が土壌中の放射性セシウムにより受ける外部被ばく、食事と大気粉じん中の放射性セシウムから受ける内部被ばくを 2012年8月から9月にかけて2ヶ月間評価しました。調査対象者には個人線量計を着用してもらい、また陰膳法による食事の提供を受けました。さらに大気粉じんを地域ごとに採取しました。外部被ばくは年間1.03ミリシーベルトから2.75ミリシーベルト、食事からの内部被ばくは年間0.0058ミリシー ベルトから0.019ミリシーベルト、大気粉じんからの内部被ばくは年間0.001ミリシーベルト以下となりました。この結果、個人被ばくの99.5%以上は外部被ばくの影響によるものであると判明しました。

 

詳しい研究内容について

福島県の避難区域を除く地域の現在と将来の被ばく線量率でのがんリスクは低い

書誌情報

[DOI] http://www.pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.1315684111

Kouji H. Harada, Tamon Niisoe, Mie Imanaka, Tomoyuki Takahashi, Katsumi Amako, Yukiko Fujii, Masatoshi Kanameishi, Kenji Ohse, Yasumichi Nakai, Tamami Nishikawa, Yuuichi Saito, Hiroko Sakamoto, Keiko Ueyama, Kumiko Hisaki, Eiji Ohara, Tokiko Inoue, Kanako Yamamoto, Yukiyo Matsuoka, Hitomi Ohata, Kazue Toshima, Ayumi Okada, Hitomi Sato, Toyomi Kuwamori, Hiroko Tani, Reiko Suzuki, Mai Kashikura, Michiko Nezu, Yoko Miyachi, Fusako Arai, Masanori Kuwamori, Sumiko Harada, Akira Ohmori, Hirohiko Ishikawa, and Akio Koizumi
"Radiation dose rates now and in the future for residents neighboring restricted areas of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant"
PNAS Early Edition, February 24, 2014

掲載情報

  • 朝日新聞(2月25日 38面)、京都新聞(2月25日 27面)、産経新聞(2月25日 28面)、中日新聞(2月25日 2面)、日刊工業新聞(2月27日 28面)、日本経済新聞(2月25日 19面)、毎日新聞(2月25日 2面)および読売新聞(2月25日 37面)に掲載されました。