「体温恒常性維持のメカニズムの解明」に成功

「体温恒常性維持のメカニズムの解明」に成功

  2014年2月4日

 西英一郎 医学部附属病院循環器内科特定准教授、平岡義範 神戸学院大学薬学部講師(元京都大学医学部附属病院特定助教)、松岡龍彦 関西電力病院医員 (元京都大学医学研究科研究生)らの研究グループは、体温恒常性維持のメカニズムの解明に成功しました。

 本成果は米国時間時間2月4日に米国科学誌「Nature Communications」誌(電子版)に掲載されました。

研究者からのコメント

左から西特定准教授、平岡神戸学院大学講師

 本成果により、ナルディライジンが、多系統(中枢神経、皮膚血管、褐色脂肪組織)での異なる機能を介して体温恒常性維持を司っていることが明らかになりました。今後はそれぞれの臓器におけるナルディライジンの役割をさらに明らかにしていきたいと考えています。

 哺乳動物の体温恒常性は厳密に制御されていますが、許容範囲を超える過酷な環境下で低体温症あるいは熱中症を発症した場合、途端に命が危険にさらされます。ナルディライジン欠損マウスは寒冷環境で体温が著しく低下しますが、体温が20度以下になっても生存していました。このマウスの熱代謝形態をより深く理解することで、低体温症への新たな対処方法や、現在致死的な脳または心筋障害を来した患者に行われている低体温療法への応用などにつなげていければ良いと考えています。

概要

 私たちヒトを含む哺乳動物の体温は、外気温によらずほぼ一定(体温のセットポイント)に保たれます。内部環境を一定に保持しようとする傾向を恒常性といいますが、体温恒常性は美しくデザインされた調節系の代表と言えます。例えば皮膚が寒さを感知すると、それが脳にある体温中枢(視索前野)に伝わり、中枢から末梢へ寒さへの対抗措置が指示されます。一つは、熱産生を専門に司る褐色脂肪組織(BAT)での非ふるえ熱産生の指示、もう一つは皮膚血管を収縮して熱が放散しないようにする指示です。これらの指示は交感神経を介して行われます。それでも足りない場合は、運動神経を介して骨格筋でのふるえ熱産生が誘導され、体温は維持されます。

 本研究グループは、ナルディライジンが欠損したマウス(Nrd1-/-マウス)を用いた研究を行った結果、ナルディライジンが体温セットポイント(中枢神経)、熱放散(皮膚血管)、熱産生(BAT)のいずれの制御にも深く関わっており、体温恒常性維持に必須であることを明らかにしました。

 


寒冷時の体温恒常性維持機構

 

詳しい研究内容について

「体温恒常性維持のメカニズムの解明」に成功

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.1038/ncomms4224

[KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/180643

Yoshinori Hiraoka, Tatsuhiko Matsuoka, Mikiko Ohno, Kazuhiro Nakamura, Sayaka Saijo, Shigenobu Matsumura, Kiyoto Nishi, Jiro Sakamoto, Po-Min Chen, Kazuo Inoue, Tohru Fushiki, Toru Kita, Takeshi Kimura & Eiichiro Nishi
"Critical roles of nardilysin in the maintenance of body temperature homoeostasis"
Nature Communications Published online 04 February 2014

掲載情報

  • 京都新聞(2月7日 25面)、日刊工業新聞(2月5日 21面)および日本経済新聞(2月5日 38面)に掲載されました。