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関節リウマチの症状は気圧と関連する

2014年1月16日

 寺尾知可史 医学研究科附属ゲノム医学センター特定助教および橋本求 医学部附属病院リウマチセンター特定助教を中心とする研究グループは、医学部附属病院に通院しているリウマチ患者さんのデータベース(KURAMAコホート:Kyoto University Rheumatoid Arthritis Management Alliance)と、気象庁がホームページにて公開している気象統計情報(気圧、気温、湿度)との相関を統計学的に解析し、リウマチ患者さんの関節の腫れや痛みの指標と、気象データのうちの「気圧」との間に、負の相関がみられる(気圧が低いほど、関節の腫れや痛みの指標が悪化する)ことを見出しました。

 リウマチ患者さんの間では、「天気の悪くなるとリウマチも悪くなる」とか「リウマチの痛みが悪化することで、これから天気が悪くなるのがわかる」などの実感があることは、昔からよく知られていましたが、実際に、リウマチ患者さんののべ2万件を超える臨床データと気象データを用いて、両者の間に相関がみられることを示したのは世界で初めてです。

 本研究成果は、英文誌「PLOS ONE」の電子版に2014年1月15日(東部時間午後5時)に発表されました。

関節リウマチとは

 関節リウマチとは、体のあちこちの関節に炎症がおこり腫れて痛む病気で、女性に多く、全人口の約1%が罹患し、日本全国でも70万人の患者さんがいます(毎年1万5千人が新たに発病しています)。進行すると関節が変形し使えなくなってしまうため、患者さんの日常生活に重大な支障をきたします。その原因はまだ十分には解明されていませんが、免疫系(自分の体を侵入してくる病原体から守るシステム)に異常があり、自分の体の一部である関節を外敵と間違って攻撃してしまうことが原因であるとされています。近年、その病気の原因として、TNF-α(腫瘍壊死因子Tumor necrosis factor-α)という炎症を引き起こす物質がかかわっていることが同定され、それをターゲットとした治療薬(生物学的製剤)が開発されたことで、治療成績が目覚ましく進歩しています。

研究の概要

 関節リウマチ患者さんの間では、「天気の悪くなるとリウマチが悪化する」とか「リウマチの痛みが悪化することで、これから天気が悪くなるのがわかる」などの実感があることは、昔からよく知られていました。しかし、これが単なる個々人の実感だけなのか、統計学的にみても、そのような相関が事実としてみられるのか、ということはよくわかっていませんでした。

 そこで、本研究では、医学部附属病院のKURAMAコホートに登録されている関節リウマチの臨床データと、気象庁ホームページにて公開されている気象データとの相関を解析しました。評価回数の多い患者を抜き出して、同一の患者での関節症状の各要素と、気象の各要素との相関を解析しました。

 その結果、

  1. リウマチ患者さんの関節の腫れや痛みの指標と、気象データのうちの「気圧」とが、統計学的に負に相関する(気圧が低いほど、関節リウマチの腫れや痛みの指標が悪化する)。
  2. 「湿度」も相関するが、「気圧」は「湿度」「気温」の影響を加味しても相関する。「気温」との間には相関がみられない。
  3. リウマチの評価日からみて、3日前の「気圧」が最もよく相関する。
  4. 血液検査の炎症を表す数値との間には、相関がみられない。

ということが見いだされました。この結果は、リウマチ患者さんの実感ともよく合致するものです。

本研究の意義

 本研究では、リウマチ患者さんが実感として感じている「天気が悪くなるとリウマチが悪化する」という実感が、統計学的にも事実であることを明らかにしました。

 そして、「天気が悪化する」ことでリウマチの症状の悪化に関係する気象の要素として「気圧」が重要であることを明らかにしました。なお、本研究では、「気圧」とリウマチの関節症状との間に統計学的相関があることを見出しましたが、その原因についてはわかっていません。血液の炎症を表す数値との相関はみられませんでしたので、リウマチの病気の進行を大きく左右することはなさそうですが、リウマチ患者さんが実感として感じることに、統計学的な意味があることを示したユニークな研究です。


図: 気圧と腫脹関節・圧痛関節数の相関の分布。一つの点が各患者を表す。全体的に負の相関がみられることが分かる。(Terao C, Hashimoto M et al. PLOS ONE published 15 Jan 2014)

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0085376

Chikashi Terao*, Motomu Hashimoto*, Moritoshi Furu, Shuichiro Nakabo, Koichiro Ohmura, Ran Nakashima, Yoshitaka Imura, Naoichiro Yukawa, Hajime Yoshifuji, Fumihiko Matsuda, Hiromu Ito, Takao Fujii, Tsuneyo Mimori (* equally contributed)

"Inverse Association between Air Pressure and Rheumatoid Arthritis Synovitis"

PLOS ONE published 15 Jan 2014

 

  • 朝日新聞(1月16日夕刊 12面)、京都新聞(1月16日夕刊 1面)、産経新聞(1月16日夕刊 8面)、中日新聞(1月16日夕刊 10面)、日本経済新聞(1月16日夕刊 14面)、毎日新聞(1月17日 4面)、読売新聞(1月16日夕刊 3面)および科学新聞(2月21日 2面)に掲載されました。