多能性幹細胞から遺伝子を用いて生殖細胞を誘導することに成功

多能性幹細胞から遺伝子を用いて生殖細胞を誘導することに成功

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用語解説

ES細胞

胚性幹細胞(Embyronic Stem Cells)のこと。マウスの場合は受精後3~4日目の胚盤胞の内部細胞塊から、培養により得られる。体外培養により無限に増殖し、生殖細胞を含むほぼ全ての組織の細胞に分化することができる。

転写因子

DNAからメッセンジャーRNAへの転写を制御するタンパク質。遺伝子が機能するには、DNAの情報がまずメッセンジャーRNAへと転写され、その後タンパク質へと翻訳される必要がある。このうち転写を制御するのが転写因子であり、生物の発生過程ではさまざまな転写因子によってゲノムのどの情報を利用するかが規定され、さまざまな細胞が生み出される。細胞内では多数の転写因子が機能しているが、細胞の種類に応じて、特徴的な転写因子は異なる。なお、特徴的な転写因子を人為的に発現させることにより、細胞の状態を変化させることが実験で示されている。例えばiPS細胞を樹立する際に用いられる遺伝子も、転写因子に含まれる。

始原生殖細胞

全ての卵子もしくは精子の源となる細胞。発生の初期、マウスの場合は胚齢6.5日前後に分化する。発生初期は少数の細胞集団であり、その発生様式に性差はないが、胚齢12日目前後に体細胞の性によって、卵子もしくは精子へと分化することが決定される。

iPS細胞

人工多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem Cells)のこと。皮膚などの体細胞に特定の因子を導入することにより作製される。ES細胞のように、無限に増殖し、生殖細胞を含むほぼ全ての組織に分化することができる。ES細胞と異なり、あらゆる個体の体細胞から作製が可能であり、自家移植により免疫拒絶を起こさない細胞である。

サイトカイン

細胞間で情報を伝達する因子。多くの種類があり、細胞の分化、形態変化、遊走、成長、増殖などに大きな影響を与える。先行研究で、BMP4というサイトカインを用いることで、PGC様の細胞が誘導されることが示されていた。

EpiLCs

エピブラスト様細胞(Epiblast-like Cells)のこと。ES細胞やiPS細胞から特定の培養条件で分化させた細胞。エピブラスト(生体内で始原生殖細胞へと分化する組織)によく似た特徴を持つ。体外培養系において、PGCLCsへと分化する能力があることが知られていた。

Blimp1

始原生殖細胞の発生に重要なはたらきを持つ遺伝子の一つ。始原生殖細胞の発生の最も初期に発現する。この遺伝子は始原生殖細胞のほかに、免疫細胞などでも重要なはたらきがあることが知られている。

Prdm14

始原生殖細胞に特異的に発現する遺伝子の一つ。始原生殖細胞の発生初期に発現し、その発生過程に必須の因子であることが知られている。

Tfap2c

始原生殖細胞の発生に重要なはたらきを持つ遺伝子の一つ。始原生殖細胞の発生初期に発現し、その発生過程に必須の因子であることが知られている。この遺伝子は体組織を含むさまざまな組織の発生過程に関与している。

PGCLCs

始原生殖細胞様細胞(Primordial Germ Cell-like Cells)のこと。ES細胞やiPS細胞からEpiLCsを経て、特定の培養条件で分化させた細胞。始原生殖細胞によく似た特徴を持つ。精子および卵子に分化することが知られていた。

stella

始原生殖細胞と卵子に特異的に発現する遺伝子の一つ。始原生殖細胞および未成熟卵子から成熟卵子まで多量に発現しており、DNAメチル化制御に関与することが知られている。

DNAマイクロアレイ

プローブと呼ばれるDNA断片を多数固定した小さなチップを用いて、全遺伝子の発現量を調べる技術