酸化物ヘテロ界面での格子歪みの直接観察に成功

酸化物ヘテロ界面での格子歪みの直接観察に成功

前のページに戻る

用語解説

走査型透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope: STEM)

細く集束された電子線を試料上で走査しながら、さまざまな角度に散乱した透過電子の強度を検出することで、試料の拡大像を観察する電子顕微鏡。像の倍率は、電子を走査する範囲によって決まり、本研究の実験の典型的な倍率は2000万倍程度である。分解能(識別できる最小の間隔)は電子線の直径で決まり、本研究では直径0.1ナノメートル以下の電子線を用いた。

ぺロブスカイト構造遷移金属酸化物

化学式ABO3で表され、Bの遷移金属イオンが酸素に囲まれて作る八面体が頂点を共有してつながった結晶構造をもつ酸化物(図1参照)

ヘテロ界面

異なる種類や構造の材料を繋いだ時にできる界面(接合面)

環状明視野(Annular Bright Field: ABF)法

走査型透過電子顕微鏡を用いて試料を観察する方法の一種で、透過電子近傍に散乱された電子を円環状の検出器で測定する。検出される電子の散乱角度は約0.63から1.32度。この方法の特徴は、直径0.1ナノメートル以下に集束された電子線を用いれば、酸素のように軽い原子も観察できる点にある。

スピントロニクス

電子を制御して電子機器を制御するエレクトロニクスに加えて、電子の持つスピンにより磁気特性も制御する新しい電子磁気制御技術

格子ミスマッチ

ヘテロ界面を構成するバルク材料の結晶格子の大きさ違い。SrRuO3の格子定数はGdScO3と比べると約1%程度小さいために、GdScO3基板上に結晶格子を揃えてSrRuO3薄膜が成長する際には引っ張り張力を受けることになる。

パルスレーザー蒸着法

ターゲットと呼ばれる酸化物材料にパルス状の高強度のレーザーを照射することで、材料を昇華させ、基板上に体積させることで薄膜を作成する手法。高品質の酸化物薄膜を作成する際に多く使われる手法である。

試料ドリフト

走査型透過電子顕微鏡を用いて拡大像を観察している際に、試料がわずかに移動することで拡大像に歪みを与える現象。この歪みは外的要因により発生するものであるため、試料本来が有している構造的歪みを検出するためには、試料ドリフトによる影響をなくす必要がある。