二核非ヘム鉄酵素の高原子価鉄-オキソ中間体の分子振動構造の解明に成功~抗がん剤やバイオ燃料の開発に向けた基礎研究の進展に寄与~

二核非ヘム鉄酵素の高原子価鉄-オキソ中間体の分子振動構造の解明に成功~抗がん剤やバイオ燃料の開発に向けた基礎研究の進展に寄与~

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用語解説

大型放射光施設 SPring-8

独立行政法人理化学研究所が所有する、兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す施設で、その運転管理と利用者支援はJASRIが行っている。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8 GeVに由来する。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げた時に発生する、細く強力な電磁波のこと。SPring-8では、この放射光を用いてナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われている。

二核非ヘム鉄酵素

二つの非ヘム鉄イオンを活性中心に含む金属酵素の総称(下図右:二核非ヘム鉄イオンの活性中心の例)。「非ヘム鉄」とは、よく知られているヘム鉄(下図左:ヘム補因子に鉄イオンが配位)と区別するための術語。

高原子価鉄-オキソ中間体

高原子価鉄イオン(通常は4価もしくは5価の鉄イオンをさす)、に酸素原子が配位した化学種。高酸化反応性をもち、酸化酵素の重要な反応中間体として生成することが知られている。下図に示すのは可溶性メタンモノオキシゲナーゼにおいて提案されている高原子価鉄-オキソ中間体Qの生成機構。

核共鳴非弾性散乱分光法(NRVS)

原子核の共鳴準位のエネルギーに近いX線を試料に照射し、フォノンの生成・消滅をともなう原子核励起をおこさせることにより振動の様子を調べる分光法。ある特定の原子に注目した振動が測定できることが特徴で、1995年に本学の瀬戸教授らにより初めておこなわれた。エネルギー準位が原子核の種類により異なることと極めて狭いエネルギー幅をもつことを利用している。

リボヌクレオチドリダクターゼ(RNR)

リボヌクレオチドを、DNAを構成するデオキシリボヌクレオチドへ還元する反応を触媒する酵素の総称で、クラス1のRNRにおいてはイミダゾールやカルボン酸を側鎖にもつアミノ酸残基に配位された二核の鉄イオンを活性中心に含むことが知られている。

可溶性メタンモノオキシゲナーゼ(sMMO)

二核鉄イオンを活性中心に含む酵素で、酸素分子およびメタンのC-H結合を活性化して、メタン−メタノール転換反応を触媒する。

{Fe2(μO)2}ダイアモンドコア構造

二核の高原子価鉄4価イオンを二つの酸素原子が架橋した分子構造の呼称。

振動分光法

分子振動構造を解析する分光法で、赤外吸収分光法やラマン分光法がその主たる分光手法であった。近年、核共鳴非弾性散乱分光法がシンクロトロン放射光を用いた新たな振動分光法として注目を集めている。

ラマン分光法

ラマン効果(物質に光を入射したとき、散乱された光の中に入射された光の波長と異なる波長の光が含まれる現象)を利用した振動分光法。

密度汎関数法計算(DFT)

原子や分子などの多体電子系のエネルギーなどの物性を電子密度から計算することが可能であるとする理論に基づく電子状態計算法。

反結合性σおよびπ軌道

鉄のd電子軌道と酸素のp電子軌道の相互作用が反結合的(異なる位相の重なり合い)であり、σおよびπ型の相互作用とは下図に示すような軌道間の相互作用を指す。