理数系科目学習者の昇進・就業形態(正規・非正規)・平均所得に関する調査結果

理数系科目学習者の昇進・就業形態(正規・非正規)・平均所得に関する調査結果

2012年4月10日


左から西村特任教授、八木 同志社大学教授

 西村和雄 経済研究所特任教授らの研究グループは、2011年2月に日本の大学卒業者の学習内容と現在の年収について、アンケート調査を行い、1万3059人から回答を得ました。そのうち理系学部出身者は4083人(平均年齢44.4歳)で約3割を占め、文系学部出身者は8976人(平均年齢42.5歳)で約7割でした。

 

 その結果、昇進、正規社員比率、平均年収などは、学習科目・得意科目によって、大きく異なることが分かりました。

理数系科目学習者の昇進・就業形態(正規・非正規)・平均所得に関する調査結果

調査目的

 日本の子供の理科離れが拡大している。日本の製造業の競争力に与える影響を見るために、理系学部出身者における理科学習の偏りと文系学部出身者における数学学習の偏りによって、学卒直後の就職パフォーマンス(初職の企業規模・就業形態)と現在の就業パフォーマンス(現職の職位・現在の所得)にどのような格差が生じているかについて、学習指導要領改訂の影響も視野に入れながら考察した。

先行研究との対応関係

  1. 浦坂・西村・平田・八木[2002]「数学学習と大学教育・所得・昇進」『日本経済研究』46号
       ※数学学習は所得に正の影響を与える。
  2. 浦坂・西村・平田・八木[2010]「数学教育と人的資本蓄積」『クオリティ・エデュケーション』第3巻
       ※理系学部出身者のほうが文系学部出身者より平均所得が高い。
  3. 西村和雄・平田純一・八木匡・浦坂純子[2012]「高等学校における理科学習が就業に及ぼす影響-大卒就業者の所得データが示す証左-」『RIETI Discussion Paper Series 12-J-001』(独立行政法人産業経済研究所)pp.1-19.

得られた知見

  • 理系学部出身者に関しては、物理を得意とする者が、化学や生物を得意とする者より初職においても大企業に正規従業員として就職する割合や、現職において役職者である比率が高く、所得も高かった。特に、すべての世代において、物理を得意としている者が相対的に低い非正規比率となっている点は注目される。最も若い世代では、物理と生物との非正規比率の差は7.2%まで開いている。
  • 文系学部出身者に関しては、大学入試において数学を受験した者が、受験しなかった者より初職において大企業に正規従業員として就職する割合や、現職において役職者である比率が高く、所得も高かった。

表1 文系学部出身者の数学受験状況別平均所得(就業者)

  標本数 平均年齢 平均所得 所得標準偏差 平均所得の標準誤差
数学受験 3977 43.5 532.2 369.5 5.86
数学未受験 3795 41.4 443.1 319.7 5.19

 

  • 朝日新聞(4月12日 17面)、京都新聞(4月11日 23面)、産経新聞(4月11日 24面)、中日新聞(4月11日 29面)、日本経済新聞(4月11日夕刊 14面)、毎日新聞(4月17日 22面)および読売新聞(4月11日 2面)に掲載されました。