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光でデザインするテラヘルツデバイス

2011年10月18日


岡田助教

 岡田隆典 学際融合教育研究推進センター次世代開拓研究ユニット助教らは、周期的なパターンをしたフェムト秒(10兆分の1秒)パルスレーザーを半導体表面に照射することでテラヘルツデバイスを作製しました。さらにこのデバイスを用いて、テラヘルツ光の広帯域変調を実現しました。

 この研究成果は、10月18日に英国科学電子雑誌サイエンティフィック・リポーツに掲載されました。

【論文名・著者名】
Okada, T. & Tanaka, K. Photo-designed terahertz devices. Sci. Rep. 1, 121; DOI:10.1038/srep00121 (2011).
http://dx.doi.org/10.1038/srep00121
http://hdl.handle.net/2433/148011 (京都大学学術情報リポジトリ(KURENAI))

研究の概要

  本研究のテラヘルツデバイスは一種の光誘起構造体であり、空間分布が周期的になったフェムト秒パルスレーザーを高抵抗シリコン半導体表面に照射することで作製されます(図1)。この空間パターンは空間光変調器によって自由に作ることができ、簡単に形状を変えることができます。近年、発生と検出技術が確立したテラヘルツ光と呼ばれる新しい光を用いて反射光を観測したところ、特徴的なディップが現れることが分かりました(図2)。このディップは、平面金属構造表面からの光応答であることが分かりました。この結果は、フェムト秒レーザー照射するとシリコン表面にレーザー形状と同じ金属構造が作製され、レーザー照射を止めるとその金属構造が消滅することを意味します。つまり、光のパターンを自由に書く、または消すことで、構造が出現または消滅することを実現しました。このテラヘルツデバイスを使って広帯域の光変調も可能です(図2)。さらに、テラヘルツ光を操作する手法としても期待されます。フォトニック結晶やメタマテリアルなど光を操作する人工構造体は、今まで微細加工技術や電極接続が必要でした。本研究のテラヘルツデバイスは、そのような加工技術や電極を必要としない光デバイスです。また、10万分の1秒でデバイスを作製、変形、消去できるため、デバイスをリアルタイムに何度も書き換えが可能です。電気を使わず光のみで動作する技術として期待できます。

 

図1 光デザインテラヘルツデバイスの作製方法。成形された励起フェムト秒パルスによって半導体プリズム表面上に二次元金属構造が作製されます。プローブ光としてテラヘルツ光を用いています。

図2 テラヘルツ反射率のグラフ。図中のaは周期構造の周期。構造体による特徴的なディップが観測されます。周期を変えるとディップ周波数が大きく変化し、広帯域周波数変調を実現しています。構造が無い場合はディップが現れません。

用語解説

テラヘルツ光(THz=1012Hz)

テラヘルツ光は一般的に0.3THzから10THzの周波数帯域であり、電波と光波の境界に位置する電磁波。光子エネルギーがmeVと非常に低く分光学的には遠赤外線光と呼ばれる。
布、紙、プラスチックに透過することから、非接触・非破壊の計測ツールとして期待されている。また、指紋スペクトルと呼ばれる巨大分子や生体分子特有の吸収が存在することから、バイオセンシングなどの用途としても研究開発されている。

 

  • 京都新聞(10月19日 25面)、科学新聞(11月4日 2面)および日経産業新聞(11月1日 10面)に掲載されました。