二次元空間に「最強電子ペア」をもつ超伝導を実現

二次元空間に「最強電子ペア」をもつ超伝導を実現

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用語解説

有効質量

真空中の自由電子の(静止)質量に対し、結晶中の電子は周りのイオンや電子と相互作用するため、見かけ上静止質量と異なる質量を持っているように観測されます。特に電子が他の電子により自由を奪われたような状態になり動きにくくなると、有効質量が増大していると見なすことができます。

超伝導

物質には電気を流すもの(金属)と流さないもの(絶縁体、半導体)の2種類存在します。金属は伝導電子を持ち、電圧を加えると伝導電子が加速され電流が流れます。金属の電気抵抗は一般に温度が下がるにつれ下がっていきますが、ある種の金属は低温で超伝導転移を示し、消費電力のもととなる電気抵抗なしに電流を流します。超伝導は電子が二つずつ結合した対を形成した量子力学的な状態であり、超伝導をより高い温度で発現させるためのメカニズムを解明することが物理学の大きな課題です。

レアアース(希土類)元素

元素周期表で57番のLa(ランタン)から71番Lu(ルテチウム)までの15個の元素(ランタノイド元素)と21番Sc(スカンジウム)と39番Y(イットリウム)の総称です。希土類元素は原子核の近傍に存在するf軌道の電子を持つことが特徴で、それに起因する磁性や重い電子状態など特徴的な電子状態が現れます。

人工超格子

2種類(A、B)あるいはそれ以上の物質を原子層単位の厚さの超薄膜として・・・A/B/A/B/A/B・・・のように繰り返し積み重ねて成長した、熱平衡状態では存在しない、人工的な周期構造を持つ物質。半導体における高電子移動度トランジスタ(HEMT)や磁性体における巨大磁気抵抗効果(GMR)など、多くの新奇な性質が発現することが知られています。

強相関電子系

単純な金属中では、電子の負の電荷は原子核の正電荷により遮蔽され、電子は自由粒子のように振る舞うのに対し、電子同士のクーロン反発力が無視できなくなった系を電子相関が強い系といいます。遷移金属や希土類金属などで、遮蔽が完全ではなくなるためにこのような現象が現れ、従来の単純な金属理論が適用できなくなり、新しい物理現象の舞台になると期待されています。

分子線エピタキシー

~10-8パスカル(10兆分の1気圧)の超高真空にした真空槽の中で、金属元素を加熱して蒸気にし、基板結晶の上に降り積もらせることで、結晶を薄膜状に成長させる方法。成長速度を遅くすることができ、結晶の厚さを原子層単位で制御することが可能な、人工超格子の成長に最適な方法です。CeCoIn5など多成分系の成長においては、Ce、Co、Inそれぞれを独立した蒸発源から蒸発速度を制御して蒸発させ、基板上で定比の化学組成を持つ化合物とすることができます。

重い電子系化合物

希土類やアクチノイドの化合物において、金属的な電気伝導を示すにもかかわらず電気伝導を担う電子の有効質量が自由電子の数十~1000倍も重くなっていると考えられる一連の物質群のことです。イメージでは、4f 軌道は局在していて拡がりを持たない電子軌道なので、その中にある4f 電子は狭い場所に閉じ込められ、電子間のクーロン相互作用がとても大きい状態になり身動きが取りにくくなっていると考えられています。物理学ではその状態を電子の有効質量が重くなって動きにくいという簡単な描像に置き換え「重い電子」と呼ばれています。重い電子系化合物の中には強磁性体(磁石) になるものや超伝導(従来の理論では説明できない) を示すものがあり、現在も盛んに研究されています。