京都大学と富士通が共同でエネルギーマネジメントの実証実験を開始~スマートコンセントを利用した省エネの研究~

京都大学と富士通が共同でエネルギーマネジメントの実証実験を開始~スマートコンセントを利用した省エネの研究~

2011年5月17日

 京都大学と富士通株式会社(本社:東京都港区、社長:山本 正已)(以下 富士通)は、株式会社富士通研究所(本社:東京都港区、社長:山本 正已)と富士通コンポーネント株式会社(本社:東京都品川区、社長:石坂 宏一)が開発した、業界最小クラスの電力センサー内蔵のスマート電源タップ(以下 スマートコンセント)を活用したエネルギーマネジメントに関する実証実験を4月より開始しました。

 2012年3月までの1年間、京都大学の本部がある吉田キャンパスにおいてスマートコンセントを設置し、スマートコンセントに接続された機器のコンセント単位のエネルギーデータを収集します。収集したエネルギーデータから個人や機器ごとのエネルギー利用状況を把握し、ひとりひとりの省エネ(節電)意識を高めて具体的な削減効果に結びつけられるような、新たなエネルギーマネジメントシステムの共同研究を実施します。

 今回の実証実験により、京都大学の実証実験エリアにおいて年間10%のエネルギー使用量および温室効果ガス排出量削減を目指します。


スマートコンセント利用イメージ画像

背景

 京都議定書発祥の地に位置する京都大学では、全キャンパスでのエネルギー使用量と温室効果ガス排出量について、毎年の設備改修により、単位面積当たり1%削減と、研究室での環境配慮行動により1%削減の合計2%削減、5年間の合計で10%削減を目標に掲げています。さらに、目標の達成に向けて、全キャンパスでの環境賦課金制度の導入を行っています。

 これまでも、エネルギー使用量の見える化推進の一つとして、桂キャンパスで富士通の施設総合管理システム「Futuric(フューチャリック)」を活用したWeb検針システムを導入し、研究室単位で電力消費を見える化するなど、先進的なエネルギーマネジメントを実施しています。

 また、東日本大震災の影響により、東日本では今夏電力量の15%削減が検討されており、節電への取り組みが重要になっています。今回の共同研究では、スマートコンセントの技術を活かし、機器や人単位での電力消費の見える化や、個人への省エネ(節電)への意識改革を行うなど、きめ細かなエネルギーマネジメントの実現に向けた実証実験を行っていきます。

実証実験と共同研究の概要

 2011年4月から2012年3月までの期間に実施する内容は以下のとおりです。

1.エネルギーデータの解析

 京都大学の本部がある吉田キャンパスにおいて、職員が業務を行う本部事務棟や多くの学生が入れ替わり利用する学術情報メディアセンター、附属図書館にスマートコンセント約150台を設置します。1台のスマートコンセントに4つのコンセントを接続できるので、最大で約600台のOA機器や情報家電を接続し、コンセント単位でエネルギーデータを収集します。収集されたエネルギーデータからエネルギー利用状況を把握し、利用者の業務や行動などとの比較から、エネルギー利用の「ムリ・ムダ・ムラ」を詳しく解析します。


スマートコンセント

見える化画面

エネルギーマネジメントシステム

2.省エネに繋がるマネジメントシステムの研究

 個人のスケジュールとそのエネルギーの利用状況との比較分析や、時間・場所ごとに分別したエネルギーの解析を行う事により、「ムリ・ムラ・ムダ」の削減方法を研究します。

 さらに、時間ごとのエネルギーの利用状況の把握から、ピーク電力の削減方法を研究します。また、利用者の省エネ活動を促進させる機能や画面の検討についても、収集データを元に研究を進めます。

3.新たなテーマの創出

 エネルギーマネジメントの活用領域を省エネ以外にも広げ、収集したエネルギーデータから人の行動パターンを把握します。これにより、ワークスタイルやライフスタイルの変革や、安心・安全といった分野へ応用する手法の創出を行い、人々の生活とエネルギーを結ぶ架け橋となるエネルギーマネジメント基盤の構築を目指します。

今後について

 京都大学では、今回の実証実験の結果をもとに、省エネ効果を大きく発揮できる場所を見極め、エネルギーマネジメントの効果的な導入・エリア拡大を目指します。また、職員や学生など全ての利用者による省エネ活動をさらに促進し、学内でのエネルギー使用量および温室効果ガス排出量を削減することを目指します。

 富士通は、今回の実証実験の結果を、クラウドによる統合エネルギーマネジメントサービスの提供へと繋げ、企業や大学などでの省エネ活動をサポートしていきます。

共同研究への期待1~京都大学環境安全保健機構 コメント

 未来の人類や地球環境にとって最重要課題はエネルギー消費量の削減です。京都大学の全学組織として環境や安全、保健を推進する環境安全保健機構では、教育研究のための環境負荷の増加にも聖域はないとの認識を大前提とし、学内のエネルギー消費量の削減に向けた取り組みを継続していきたいと考えています。

 また、一方では、社会貢献としての環境教育や環境マインドの高い人材の育成を継続し、環境問題の解決に関わる研究のアピールの場や萌芽的研究の支援に向けた仕組みを構築することも重要な課題です。

 東日本大震災の後、本学においても、石油、天然ガスなど一次エネルギーの安定確保に繋がる行動として、教育研究診療などに影響のない限り、エネルギー消費を削減することを呼び掛けましたが、今回のプロジェクトにおいて、「キャンパスをフィールドとした環境問題への取り組み」としてエネルギー消費の削減に向けて大きな成果をあげ、その成果が社会へ還元されることを期待します。

共同研究への期待2~富士通 コメント

 本共同研究は、個人の活動とエネルギー消費を結びつけるという、今までにないチャレンジです。お客様の省エネはもちろんのこと、今後ますます関心の高まる安心・安全といった分野においても社会に対して新たな価値を提供できることを期待しています。京都大学様にはこのような機会をいただいたことに感謝申し上げるとともに、共同研究の成果を全学的に展開していただき、削減目標達成を富士通としてご支援できれば幸いです。お客様の環境負荷の軽減と新たな価値創造は富士通の使命でもあり、クラウドによる統合エネルギーマネジメントサービスや省エネ行動にインセンティブを与えるサービスへの展開を視野に入れた研究を行いたいと考えております。

用語解説

Futuric

施設総合管理システム-建物内の電力、空調、照明、防犯、防災などの設備を統合監視するオープン化対応のBA(ビルオートメーション)システム。詳細は、富士通ウェブサイトをご覧ください。
http://fenics.fujitsu.com/products/futuric/

 

  • 京都新聞(5月23日 1面)に掲載されました。