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海洋バイオマスからバイオエタノール生産

2011年4月28日


村田教授

 村田幸作 農学研究科教授の研究グループの成果が、科学誌「Energy & Environmental Science」に掲載されました。

【論文情報】
Hiroyuki Takeda, Fuminori Yoneyama, Shigeyuki Kawai, Wataru Hashimoto., and Kousaku Murata
Bioethanol production from marine biomass alginate by genetically engineered bacteria..
Energy & Environmental Science, (accepted for publication)(2011)
(インパクトファクター 8.5  発行所:Royal Society of Chemistry (UK))

研究のトピックス性

 エネルギーの確保は、国家存亡に関わる重要問題である。本研究では、食料との競合や環境問題を引き起こさない海洋バイオマス(多糖:アルギン酸)からのエタノール生産技術を世界で初めて確立した。本研究成果は、2011年度日本農芸化学会大会でトピックス賞を受賞した(東日本大震災のため学会中止・発表中止)。また、本研究は権威のある著名なエネルギー・環境関係の専門誌(Energy&Environmental Science:インパクトファクター 8.5)に掲載された。

研究の背景と目的

 化石燃料代替エネルギーの生産や地球温暖化問題の低減を目的に、デンプンやセルロースからのエタノール生産が国内外で検討されている。しかし、かかる陸上のバイオマスを原料とした場合には、その供給量、運搬、食料との競合性、更にはセルロース分解時の環境負荷などの諸問題が解決されない。そこで、陸から海に視点を移し、海洋バイオマスからエタノールを生産する技術の確立を目的とした。

研究の成果

 褐藻類の主成分であるアルギン酸(乾燥藻体の30~60%を占める。構成単糖:ウロン酸)からのエタノール生産技術を世界で初めて確立した。具体的には、体腔形成能と強力なアルギン酸代謝能をもつスフィンゴモナス(Sphingomonas)属細菌A1株の細胞改造と培養工学的解析により、アルギン酸からのエタノール生産を可能にした。好気培養下、2~3日間で13g/Lのエタノールの生産が可能である。

学術的/社会的重要性と波及効果

 海洋バイオマス利活用の学術的基盤を構築した。開発した技術は世界をリードするのみならず、我が国のエネルギー問題と地球温暖化問題の低減、海洋開発と新規雇用の促進など、社会に大きな影響を与える。

 体腔(細胞表層に形成される開閉自在の孔)は、低分子物質から高分子物質まで呑み込む巨大な器官である。この器官の機能を応用することにより、ダイオキシン分解(Nature Biotechonl.,2008)、各種バイオマスからのエタノール・ブタノール・プロパノールのようなアルコール燃料、更には他の有用物質生産への展開が可能となる。

(特許)
特許:「海洋バイオマスからのエタノール生産」(国立大学法人京都大学・株式会社マルハニチロホールディングス)国内出願番号 特願2009-198972;国際出願番号 PCT/JP2010/064383

   

  1. 体腔形成細菌(スフィンゴモナス属細菌A1株)は、「口」を開けて巨大物質を呑み込む。バイオテクノロジー技術(遺伝子工学・代謝工学・分子生物学・構造生物学・網羅的解析学)を駆使して細胞改造したA1株を用いて、アルギン酸(海洋バイオマス)をエタノールに転換する技術(第三世代バイオエタノール生産法)を世界で初めて確立した。生産性は、13g/L/2~3日。なお、本研究は生研センタープロジェクトの一環として行われた。

関連リンク

 

 

  • 朝日新聞(5月12日 29面)、京都新聞(4月28日 23面)、産経新聞(5月9日 20面)、毎日新聞(4月28日夕刊 3面)および読売新聞(6月6日 17面)に掲載されました。