フラスコで簡単に合成できるナノチューブの作製に世界で初めて成功 -パーツの組み換えで性質のコントロールが可能な新材料の開発-

フラスコで簡単に合成できるナノチューブの作製に世界で初めて成功 -パーツの組み換えで性質のコントロールが可能な新材料の開発-

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用語解説

多孔性物質

内部に多数の細孔を有する物質を指す。多孔性材料における細孔はそのサイズにより、マクロ孔(>50nm)、メソ孔(2~50nm)、マイクロ孔(<2nm)に分類される。特にマイクロ孔を持つ多孔性材料は、細孔のサイズが分子のサイズに近いため、さまざまな分子の吸着・分離(分子ふるい)への応用面が注目され、古くから研究が行われている。

カーボンナノチューブ

1991年に飯島澄男により発見された物質であり、6つの炭素から構成された六角形がつなぎ合わさった蜂の巣状のシート(鉛筆の芯である黒鉛と同様)を丸めてでき上がったような直径が0.7~1.4nmのチューブ状の構造を持っている。蜂の巣状のシートの丸め方によって性質が金属的になったり半導体的になったりする。

ボトムアップ法

基礎的な部分を基にして全体を組み上げること(bottom-up, 対義語はtop-down)を意味する。原子や分子を数十から数百の単位で構築し、微細な材料やデバイスを作り上げる技術のことである。比較的新しい技術であり、ナノスケールの構造が自発的に形成する自己組織化法や人工的に組み上げる逐次積層法などが注目されている。この方法は、数十nm以下のスケールのナノ構造体の加工・製造に有効である。今回の研究では、目標となるナノメートルサイズの構造体を金属イオンや有機物を小さなパーツとして使用し、積み木細工のように組み上げる手法を指す。

大型放射光施設SPring-8

兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高の放射光を生み出す理化学研究所の施設で、その管理運営はJASRIが行っている。SPring-8は ‘Super Photon ring-8GeV’に由来する。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げた際に発生する、細く強力な電磁波のこと。SPring-8では、この放射光を用いて、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで広範な研究が行われている。

単結晶X線結晶構造解析

結晶にX線を照射すると、結晶を構成する原子や分子の規則正しい配列に応じた回折現象(回折パターン)が観測される。この回折パターンを解析することで、結晶中で原子や分子がどのように配列しているのかを明らかにすることができる。

X線吸収微細構造

X線のエネルギー(波長)を変えながら物質に照射すると、物質を構成する分子中の原子がX線を吸収する。吸収の度合いはX線のエネルギーとX線を吸収した原子の持つ電子数とその周りに存在する他の原子の種類と数により異なるため、分子の構造や電子状態についての情報を得ることができる。X線のエネルギーを容易に選択できるので、放射光は「X線吸収微細構造」実験に最適な光源である。

紫外可視吸収スペクトル

物質に可視光、紫外光領域のエネルギーの光を照射すると、物質を構成する分子が光を吸収する。分子の電子状態により吸収される光のエネルギーが異なるため、物質の電子状態についての情報が得られる。通常、半導体のバンドギャップ(後述)は可視紫外領域にあるために、半導体の電子状態についての詳細な情報を得ることができる。

バンドギャップ

半導体や絶縁体においては、電子が詰まった領域(価電子帯)と電子が詰まっていない領域(伝導帯)の二つが電子の存在できない領域(禁制帯)に隔てられて存在しているような状態となっている。この時、価電子帯と伝導帯の間の隔たり(エネルギーの差)をバンドギャップと言う。この場合、電子はバンドギャップ以上の熱や光などのエネルギーを受け取り価電子帯から伝導帯に飛び移る(遷移)ことで動くことが可能になり、電流が流れる。なお、バンドギャップが存在しない物質が金属であり、電子は遷移する必要がなく動けるため、電流を流しやすい。

ドーピング

半導体材料においてよく使用される手法の一つで、作成段階で少量の別の原子を不純物として意図的に混入することで、半導体の電流の流す性質やバンドギャップを変化させることができる。例えば、シリコンに対し、電子数の一つ多いリンをドーピングすると、余剰な(一つ余った)電子がシリコンの伝導帯付近に注入され、動くことが可能になる。