田沢湖で絶滅した固有種クニマス(サケ科)の山梨県西湖での発見

田沢湖で絶滅した固有種クニマス(サケ科)の山梨県西湖での発見

2011年2月22日


中坊教授

 中坊徹次 総合博物館教授らの研究グループの成果が、日本魚類学界英文誌の電子版に掲載されることになりました。

研究の概要

 クニマスOncorhynchus kawamurae Jordan and McGregor in Jordan and Hubbs (1925)は秋田県田沢湖に生息していた固有種であったが、1940年に玉川の強酸性水が田沢湖に導入され、以後、姿を消した。しかし、1935年に10万粒の発眼卵が移植された湖のひとつ山梨県西湖で、2010年3月初めから4月初めにかけて、水深30~40mの湖底に仕掛けた刺し網によってクニマスと同定できる9個体が得られた。体色は黒、鰓耙数は37~43、幽門垂数は47~62であり、これまで田沢湖から報告されたクニマスの特徴と一致している。また、これらの標本は産卵中またはその直後と見られる特徴を示していたが、早春に産卵するものは日本の他のサケ属では知られておらず、クニマス特有の性質とされている。西湖にはヒメマスも移植され生息しているが、5座を用いたマイクロサテライトDNA分析では、西湖のヒメマスと阿寒湖のヒメマスの間では差異が認められなかったのに対し、西湖のヒメマスとクニマスの間では有意な異質性が確認され、生殖的隔離があることが示された。

   

  1. a クニマス雄個体、180.5mm、2010年4月4日山梨県西湖(伊藤氏写真)
    b クニマス雌個体、203.1mm、2010年3月19日山梨県西湖(中坊写真)
    c クニマス雌個体と成熟卵、233.0mm、2010年3月19日山梨県西湖(中坊写真)
       ※Nakabo et al. 2011(DOI 10.1007/s10228-011-0204-8)より

 関連リンク

  • 論文は、以下に掲載されております。
    http://dx.doi.org/10.1007/s10228-011-0204-8
    http://hdl.handle.net/2433/138094 (京都大学学術情報リポジトリ(KURENAI))
  • 以下は論文の書誌情報です。
    Nakabo T, Nakayama K, Muto N, Miyazawa M. Oncorhynchus kawamurae “Kunimasu,” a deepwater trout, discovered in Lake Saiko, 70 years after extinction in the original habitat, Lake Tazawa, Japan [Internet].
    Ichthyological Research 2011 (Online First)

 

 

  • 朝日新聞(2月22日 16面)、京都新聞(2月22日 25面)、産経新聞(2月22日 22面)、日本経済新聞(2月22日 38面)、毎日新聞(2月22日 27面)および読売新聞(2月22日 29面)に掲載されました。