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脂肪萎縮症患者を対象としたレプチン補充療法~脂肪萎縮症患者に朗報~

2010年11月19日

 先端医療開発スーパー特区「難治性疾患を標的とした細胞間シグナル伝達制御による創薬(難病創薬スーパー特区)」の中核拠点である医学部附属病院探索医療センターは、脂肪萎縮症患者を対象に、脂肪萎縮症に合併する糖尿病および脂質異常の改善を目的とするレプチン補充療法の医師主導治験を開始します。また、レプチン補充療法導入後の脂肪萎縮症患者を対象に、レプチン補充療法の長期有効性と長期安全性の確認を目的とする臨床試験(高度医療)を開始します。

 脂肪萎縮症は、脂肪組織の消失あるいは減少を特徴とする希少難病で、難治性の糖尿病や脂質異常、脂肪肝などを高頻度に合併するものです。これまでに有効な治療方法は開発されていません。

 近年、米国の国立衛生研究所や京都大学内分泌•代謝内科の臨床研究により、脂肪萎縮症では脂肪組織から分泌されるホルモンであるレプチンが欠乏していること、レプチンの補充が脂肪萎縮症に合併する糖尿病、脂質異常、脂肪肝などを劇的に改善することが証明され、レプチン補充療法により脂肪萎縮症患者の予後は大きく改善するものと期待されています。これまで京都大学では脂肪萎縮症患者を対象にレプチン補充療法の臨床研究を行ってきましたが、今回、医師主導治験を開始することになりました。また、レプチン補充療法導入後の脂肪萎縮症患者を対象に、レプチン補充療法の長期有効性と長期安全性の確認を目的とする臨床試験(高度医療)を併行して実施します。

 本医師主導治験は先端医療開発スーパー特区「難病創薬スーパー特区」の活動と連携して実施されるもので、医学部附属病院治験審査委員会の承認を得て、2010年7月に独立行政法人医薬品医療機器総合機構への治験届を完了しました。2010年11月より開始し、期間は2年間を予定しています。また、高度医療については2010年5月の高度医療評価会議、同年7月の先進医療専門家会議および中央社会保険医療協議会において承認され、2010年11月より開始します。なお、本研究に関しては、文部科学省「橋渡し研究支援推進プログラム」による支援を受けています。

医師主導治験・高度医療の内容

医師主導治験

低レプチン血症および糖脂質代謝異常を認める6歳以上の脂肪萎縮症患者を対象に、レプチン補充療法を行い、糖脂質代謝異常に対する有効性と安全性を評価する。組換え型ヒトメチオニルレプチン(一般名:メトレレプチン)を1日1回自己注射にて皮下投与することでレプチンの補充を行う。最初の9週間は入院にて、その後11週間は自宅にて自己注射を継続し、治療開始20週後に糖尿病および脂質異常症の改善を評価する。本治験の目標症例数は3例。

高度医療

既にレプチン補充療法が導入され、2か月以上治療を受けた脂肪萎縮症患者を対象に、レプチン補充療法を継続し、糖脂質代謝異常に対する長期有効性および長期安全性を確認する。メトレレプチンは1日1回、自己注射にて皮下投与する。治療開始後2年間は6か月毎、3年目以降は1年毎に入院して検査を行い安全性および有効性について評価する。本試験の目標症例数は12例。

今後の展望

医師主導治験および高度医療で収集したデータをもとに、メトレレプチンの薬事承認を目指す予定

研究メンバー

医師主導治験

  • 主任研究者
    中尾一和 医学研究科内科学講座 内分泌・代謝内科学教授
  • 副主任研究者/治験責任医師
    海老原健 医学部附属病院 探索医療センター探索医療開発部准教授
  • 副主任研究者
    細田公則 医学研究科人間健康科学系専攻教授 
    清水章 医学部附属病院 探索医療センター探索医療開発部教授

高度医療

  • 主任研究者
    中尾一和 医学研究科内科学講座 内分泌・代謝内科学教授
  • 研究責任者
    海老原健 医学部附属病院 探索医療センター探索医療開発部准教授

  • 京都新聞(11月20日 25面)および読売新聞(11月24日 夕刊 14面)に掲載されました。