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神経疾患モデル細胞と正常細胞の酸化還元状態の違いを検知できるセンサータンパク質の開発に成功

平成22年5月25日


阪井教授

 阪井康能 農学研究科教授、奥公秀 農学研究科助教らの研究グループの研究成果が、「Molecular and Cellular Biology」誌に掲載されました。

  • 論文名:
    神経疾患モデル細胞と正常細胞のレドックスの違いをリアルタイムで検知できるセンサータンパク質”レドックスフロール”の開発と創薬研究への応用
    Mol Cell Biol, in press (2010)

研究の概要

 細胞外からの刺激やストレスあるいは疾患などによって、細胞内の酸化還元状態(レドックス)は変動する。このような細胞内のレドックス変化について、酵母がもつレドックスセンサータンパク質Yap1のセンシング部位の構造変化を、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を用いて可視化するセンサータンパク質レドックスフロールの開発に成功した。レドックスフロールと同様に、レドックスを検知するプローブroGFPが報告されていたが、疾患モデル細胞と正常細胞との間のような、微妙なレドックス状態の差異を区別することはできていない。

 レドックスフロールを動物・酵母細胞内で発現させることにより、細胞内のレドックス変化が顕微鏡下のスペクトル変化として簡単に追跡できるようになった。例えば、重篤な遺伝的神経疾患に、オルガネラの一つであるペルオキシソームが形成できないZellweger症候群が知られている。ペルオキシソームは、活性酸素を生産する代謝を担うオルガネラである。ペルオキシソームを持たないマウス培養細胞では、予想に反して、正常細胞に比較して細胞質が還元的になっていた。さらに、レドックスフロールを発現するマウス培養細胞を用いて、薬剤スクリーングを行った結果、TSAという薬剤が有効なことがわかった。

 今後、様々な酸化ストレスや神経疾患ばかりでなく、様々な細胞や生命現象に伴う細胞内レドックス変化の可視化を行うことにより、医薬品のみならず、食品・化粧品などの生理化学研究に応用するための一歩を踏み出すことができる。

 

関連リンク

 

  • 朝日新聞(6月29日 36面)、京都新聞(5月26日 26面)、産経新聞(5月26日 22面)、日刊工業新聞(5月26日 24面)および読売新聞(5月26日夕刊 2面)に掲載されました。