セクション

宇宙天気予報の基礎となる太陽嵐の最新モデリングに成功

2010年3月15日


左から柴田教授、草野教授

 柴田一成 理学研究科附属天文台教授、草野完也 名古屋大学太陽地球研究所教授らの共同研究グループは、実際の太陽観測データに基づいた太陽嵐(太陽フレア、コロナ質量放出、太陽風擾乱)の数値モデリングに成功しました。この研究成果は、宇宙天気予報の進展と太陽嵐のメカニズムの解明に大きく貢献することが期待されます。

研究成果の概要

 現在、太陽黒点活動は徐々に活発化しており、黒点の発生数は2013年ごろ次の極大を迎えると考えられています。こうした太陽活動の高まりに伴ってしばしば太陽表面でフレアやコロナ質量放出などの太陽嵐が起こりますが、その影響が太陽風の擾乱などとして地球まで伝わると、地球周辺の宇宙環境は磁気嵐などの激しい嵐に襲われます。その結果、人工衛星、通信、地上電力網などに深刻な障害が発生する場合があります。こうした宇宙の嵐を原因としたさまざまな被害を未然に防ぐためには、「宇宙の天気」の予報、すなわち「宇宙天気予報」が不可欠です。しかし、太陽と宇宙空間の複雑な変化を正確に予測する方法論はまだ確立されていません。

 本共同研究では、この宇宙天気予報の基礎となる太陽地球間環境(太陽、太陽風、地球磁気圏・電離圏)の観測とそれに基づく数値モデリング(数値シミュレーション)研究を進めてきました。このたび、5年間の共同研究の成果として、太陽フレア爆発とその結果として生じる一連の宇宙環境の乱れをほぼ再現することができるモデルの開発を実現しました。

 このうち、太陽嵐(太陽フレア、コロナ質量放出、太陽風擾乱)モデルは、太陽観測衛星「ひので」が観測した精密な太陽表面磁場データに基づき、太陽フレアとそれに伴う宇宙環境の乱れを計算する世界的にも例の無い先進的なモデルです(図1参照)。我々は「地球シミュレータ(独立行政法人海洋研究開発機構)」を利用してこの最新モデルを2006年12月13日に発生した大規模フレアに適用することにより、フレアとその結果として生じたコロナ質量放出および太陽風擾乱の様子を再現することに初めて成功しました(図2、図3)。特に、太陽フレアの後に発生したプラズマとエネルギーの急速な伝播の様子を捉えることに初めて成功しました(図4)。この成果は太陽嵐のメカニズムを解明すると共に、数値予測を通して宇宙天気の被害を最小限に抑える技術を確立するために大きく貢献するものです。

  1. 図1:太陽観測データに基づく太陽嵐モデリングのながれ

  1. 図2:2006年12月13日に太陽黒点近傍で発生した太陽フレア(左)とモデリングによって再現された太陽コロナの磁力線構造。ねじれた磁力線(右図白 線)の先端部分がフレアの明るい領域に対応することが分かる。

  1. 図3:太陽嵐モデリングによって再現された太陽フレアに伴って太陽表面から噴出するプラズマ(赤面)と磁力線(緑線)の変化。底面の黒い領域は太陽黒点に対応する。

  1. 図4:2006年12月13日に発生した太陽フレアの観測とシミュレーション結果。左は太陽観測衛星「ひので」のX線望遠鏡(XRT)が捉えられた太陽フ レアのX線像。赤線で示された形状の構造が急速に矢印の方向へ伝播する様子が観測された。左はフレアモデルによる3次元シミュレーションで再現された磁力 線と衝撃波面。「ひので」で観測されたX線の波動が衝撃波の伝播に対応することが分かる。

 なお、本研究成果は、来たる日本天文学会2010年春季年会(3月24日~27日:広島大学)でその一部が発表されるほか、日本地球惑星科学連合2010年大会(5月23日~28日:幕張)とSolar Terrestrial Physics 12 Symposium(7月12日~16日:ベルリン)において、草野教授により総合報告がなされる予定です。

共同研究者名

草野 完也 (くさの かんや) 名古屋大学太陽地球環境研究所・教授
柴田 一成 (しばた かずなり) 京都大学大学院理学研究科附属天文台・教授、台長
塩田 大幸 (しおた だいこう) 名古屋大学太陽地球環境研究所・研究員
片岡 龍峰 (かたおか りゅうほう) 東京工業大学大学院理工学研究科・特任助教
井上 諭 (いのうえ さとし) 独立行政法人情報通信研究機構・専攻研究員

 

  • 朝日新聞(3月16日夕刊 7面)、京都新聞(3月16日 26面)、産経新聞(3月16日 25面)、中日新聞(3月16日 26面)、日刊工業新聞(3月16日 22面)および毎日新聞(3月16日 3面)に掲載されました。