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100年来の謎に迫る-体の極性を決める仕組みを解明しました。

2009年12月8日

 阿形清和 理学研究科教授らの研究グループの研究成果が米国科学アカデミー紀要に掲載されました。

 写真は左から矢澤重信 理学研究科研究員、阿形教授

研究成果の概要

 われわれの体には、頭側と足側という方向性がある。この体の方向性を最初に問題にしたのは、ノーベル賞学者のトーマス・ハント・モーガンである。彼は、プラナリアの体を切って再生させた時に、頭のあった方から頭を再生し、もともと尾のあった方から尾を再生することから、生物の体には磁石と同じような性質があるとし、1903年に『体の極性』という概念を打ち出した。さらに、短い断片をつくると、もともと尾のあった方から頭を再生することを見出し、『極性は転換する』ことを発見した。

 この『体の極性』をつくる仕組みの謎がついに京都大学のグループによって解明された。京都大学の阿形研究室グループは今までにも脳の再生を頭部に限定している<nou-darake遺伝子>などユニークな発見をしていたが、今度は矢澤研究員が脳が再生できない<nou-nashi遺伝子>を見つけ、それが頭から尾を再生した結果、脳ができないことを見出した。その遺伝子はヘッジホッグと呼ばれる分泌性の因子の受容体をコードしていること、ヘッジホッグが頭から尾につながる神経で作られていることを見出した。ヘッジホッグが神経を介して尾の方に輸送されているとすると、体の切断によって、神経の尾の方からヘッジホッグが漏れ、ヘッジホッグがこちら側に尾を作れと指令する結果、体の後方に尾が再生される。断片が短いと、尾を作れと指令するのに十分なヘッジホッグが分泌されないために尾ができなくなり、極性の転換が起こることが示唆された。

 人の体やそれぞれの臓器にも極性があることが知られており、今後、再生医療などで臓器を再生させるときの重要な手かがりになると期待されている。

解説

尾を指令する受容体をなくしたプラナリアで何故に頭から尾が再生してくるのか

 ヘッジホッグの受容体は全身で発現しており、ヘッジホッグのシグナルが普段は入らないようにしている(どこにでも簡単に尾ができないようにしている)。要はヘッジホッグの受容体はヘッジホッグがくっついた時にだけヘッジホッグの指令が入るように働くため、普段は神経の末端がある尾の先でだけヘッジホッグのシグナルが入り、尾が伸びていく。すなわち、受容体をなくしたプラナリアでは、尾をつくるシグナルを抑えきれずに、頭の方から尾を再生してしまう。

 

  • 京都新聞(12月8日 26面)、産経新聞(12月8日 20面)、日刊工業新聞(12月8日 20面)、日本経済新聞(12月8日 42面)および読売新聞(12月8日 2面)に掲載されました。