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免疫抑制性T細胞の2つの機能的分類とそれらの分化過程が明らかに

2009年5月22日


坂口教授

 坂口志文 再生医科学研究所 教授らの研究グループは、免疫反応を調節する制御性T細胞が役割の異なる2種類のタイプに分類できることおよび、それらの分化過程を明らかにしました。自己免疫病では、特定のタイプの制御性T細胞が増減しており、これを標的にした新しい免疫応答のコントロール方法の可能性を示すものです。

 この研究成果は、坂口教授らのグループが、京都大学、大阪大学、CREST、フランスのINSERMとの共同研究によって得たもので、5月21日発行の米国免疫学専門雑誌「Immunity」に掲載されます。

論文名

  • 「Functional delineation and differentiation dynamics of Foxp3-expressing subpopulations of  T cells in humans」
    (Foxp3を発現するヒトCD4陽性T細胞分画の機能的分類と動的変化について)

研究成果の概要

免疫抑制性T細胞の機能的分類と動的変化について

 制御性T細胞は、様々な免疫反応を抑制する方向に制御する特別なリンパ球であり、正常な免疫機能の維持に必要不可欠な細胞であることをわれわれの研究グループが示してきました。制御性T細胞は、自己免疫病やアレルギーといった過剰な免疫反応を抑制する一方で、腫瘍に対する免疫反応などの有益な免疫反応も抑制してしまうことが知られています。

  今回、われわれは、ヒトの制御性T細胞が、未活性型と活性型の2種類のタイプに分類できることを発見しました。未活性型は適切な刺激を加えることで効率良く増加し、活性型へと変化する。活性型は抑制機能を発揮した後、死んでいく。胎児血液中には未活性型が多い一方で、高齢者では活性型が多いことも確認されました。免疫に異常の認められるいくつかの病態では、制御性T細胞の型の割合に異常があることが発見されました。たとえば、原因不明の肉芽腫性疾患であるサルコイドーシスでは活性型制御性T細胞が2倍以上に増加している一方、自己免疫疾患であるSLEでは、活性型制御性T細胞の減少が認められました。

 未活性型の制御性T細胞を取り出して、効率良く増やして臓器移植の患者に戻し拒絶を阻止するなど、特定の型の制御性T細胞を標的とする治療法の開発が期待されます。

用語解説

制御性T細胞

T細胞は、リンパ球の一種で、骨髄の中で生み出された前駆細胞が、肋骨の後ろ、心臓の上にコブシ状の大きさで存在する胸腺と呼ばれる臓器での選択を経て分化し、成熟したもので、細胞に対する免疫反応に関係しています。T細胞の表面には特徴的なT細胞受容体(T cell receptor; TCR)が存在します。T細胞の中にもいくつかの種類があり、その中でCD4、CD25、Foxp3を発現して他のT細胞の免疫反応を抑制する機能を持つものを制御性T細胞と呼びます。
 

  • 朝日新聞(5月26日 21面)、京都新聞(5月22日 3面)、産経新聞(5月22日 25面)および日刊工業新聞(5月22日 24面)に掲載されました。