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断続的飢餓による寿命延長の鍵を握る遺伝子を発見

2008年12月15日

 西田栄介 生命科学研究科教授らの研究成果が、英国科学誌「Nature」に掲載されることになりました。

 写真は西田栄介教授(左)と大学院生の本城咲季子氏(右)

研究成果の概要

 酵母から哺乳類まで多様な種において、食餌制限は抗老化作用を持ち、寿命を延長するという事が知られていた。またげっ歯類においては、寿命を延長するだけでなく、癌、糖尿病といった老化関連疾患の発症を抑制する。また、最近の知見として、カロリーの総摂取量を低減させなくても、飢餓を繰り返し導入することで、食餌制限の有用な効果を得られる可能性が示されていた。

 そこで、我々は断続的飢餓が寿命を延長する分子機構を解明するために、老化研究のモデル生物である線虫C. elegansを用いて研究を行い、以下の事を明らかにした。

  1. 断続的飢餓は線虫C. elegansの老化を遅延させ、寿命を大幅に(約50%)延長する。線虫C. elegansは老化研究に最もよく用いられる生物種の一つであり、この発見は断続的飢餓による寿命延長の研究に今後大きく貢献するものである。
  2. 断続的飢餓が寿命を延長するのに必要な遺伝子群(Rheb, TOR, DAF-16, HSF-1)を同定した。また、これらの遺伝子が、少なくとも部分的にはインスリン/IGF様シグナルを介して寿命を制御しているという事を明らかにした。これらの遺伝子はいずれも進化的に高く保存されており、全て相同な遺伝子がヒトにも存在する。また、げっ歯類においてもインスリン/IGF様シグナルは寿命を制御している事がわかっている。これらの点から、本研究で得られた寿命延長の分子機構に関する知見は、哺乳類にも適用できる可能性がある。
  3. 本研究において、一つの遺伝子(Rheb)が、寿命を延長する作用と、寿命を制限する作用と、二つの逆の機能を担っている事が明らかとなった。これは食餌制限から寿命延長に至るシグナルの複雑さを示している。この結果は、一つの遺伝子の機能を安易に阻害する事の危険性を警告している。

 以上の結果から、本研究は食餌制限による寿命延長機構の解明に大きく貢献した。これらの知見は高等生物における老化関連疾患の発症の抑制などにも役立つ事が期待される。

  • 朝日新聞(12月15日夕刊 11面)、京都新聞(12月15日夕刊 7面)、産経新聞(12月15日夕刊 14面)、中日新聞(12月16日 33面)、日本経済新聞(12月15日夕刊 20面)、毎日新聞(12月15日夕刊 2面)および読売新聞(12月15日夕刊 13面)に掲載されました。