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お好みの蛍光色素で薬物受容体を瞬時に標識:創薬研究への応用

2008年6月13日

  松崎 勝巳 薬学研究科教授らの研究グループは、生きている細胞で、薬物受容体などの膜タンパク質を特異的に蛍光標識する方法として、タンパク質よりも小さい「ペプチド」間の強固な結合を利用する方法を開発しました。
 なお、本研究の一部は、文部科学省ターゲットタンパク研究プログラムの成果です。

写真:松崎勝巳 教授と矢野義明 助教

研究成果の概要

 生きている細胞で、薬物受容体などの膜タンパク質を特異的に蛍光標識する方法は、タンパク質の細胞内輸送、構造変化,タンパク質間相互作用などを研究する重要なツールです。しかしながら、既存の標識法は、蛍光標識のサイズが大きすぎて目的タンパク質の機能を損なう、標識に時間がかかる、細胞への毒性がある、非特異的な標識がある、などの欠点がありました。今回我々はサイズが小さく、受容体機能への影響がない蛍光標識法として、タンパク質よりも小さい「ペプチド」間の強固な結合を利用する方法を開発しました。この方法では、目的とする薬物受容体の端にペプチドを付加し、このペプチドに特異的に結合する蛍光標識ペプチドを加え、受容体の特異的標識を行います(図1)。

図1:強固に結合するペプチドペアを用いた新規受容体蛍光ラベル法。

 この標識法は(1)多彩な蛍光特性を持つ好みの合成蛍光色素を受容体に標識できる、(2)迅速に標識できる(1分以内)、(3)毒性がない、(4)非特異的な標識もほとんどない、等の優れた特徴を持つ方法であることが明らかになりました。また、今回開発した方法では、ある時間に細胞膜表面に出ている受容体だけを瞬時に標識し、その後の挙動を追うことが可能です。これを利用して、薬物刺激により、細胞表面のベータ2アドレナリン受容体が細胞内に取り込まれていく過程を可視化することができました(図2)。この標識法は、今後、新たな薬を探索するためのツールとして有望だと考えています。

図2 ベータ2アドレナリン受容体の細胞内取り込みの可視化。薬物刺激により細胞内に取り込まれた受容体を赤色蛍光で、まだ取り込まれていない受容体を緑色蛍光で別々に標識している。

 

  • 京都新聞(6月14日 31面)、産経新聞(6月14日 22面)、日刊工業新聞(6月16日 18面)および日経産業新聞(6月16日 10面)に掲載されました。