京都大学メールマガジン Vol.64

京都大学メールマガジン Vol.64

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京都大学メールマガジン Vol.64
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目次:
◆総長メッセージ「人々との出会い(8)」
◆修士課程1回生シリーズ/理学研究科 浅野宏幸
◆大学の動き
◆研究成果
◆イベントのお知らせ
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◆総長メッセージ「人々との出会い(8)」:松本紘

 これまでの人生で私が出会った人々についてお話をさせていただいておりますが、今号は大学院生時代について振り返ってみたいと思います。

8.大学院時代

 研究者として宇宙に関する研究を進めてきた私ですが、学部学生の頃は、誰もが寄せる宇宙への関心以上の強い興味は持っていませんでした。しかし、大きな転機は偶然から訪れます。大学院試験が免除されることになり、学生生活をあと2年満喫しようという単純な思いで進学を決めました。ミリ波の研究でもしてみようかと関連の教授の研究室を訪れましたが、留学で大学を1~2年空けるため受け入れができないと仰せでした。そこでたまたま隣室であった前田憲一教授の扉を叩いたことが、私の宇宙科学へのキャリアの振り出しとなりました。前田教授の授業は受けたことがありましたが、先生ご自身のことも、先生の研究内容や研究室構成メンバーなども全く知りませんでした。しかしこのことが京都大学で長きにわたってお世話になる「出会い」となりました。

 研究室に入ってみてわかったことですが、前田先生は電離層研究や黎明期の日本の宇宙開発の中心人物で世界的な学者でした。前田研究室には大林辰蔵先生、加藤進先生、木村磐根先生、櫻井邦朋先生、大家寛先生など、電波関係、宇宙関係の名だたる研究者や電子計算機関係の津田孝夫先生、矢島脩三先生もおられました。情報学の権威の坂井俊之教授も前田研究室におられたことがありました。私が前田研究室に入ったときには、坂井先生、長尾真助教授(後に、第23代京都大学総長)らと独立した研究室を構えておられました。その後、長尾先生は一時期前田研究室の助教授としても在籍されたので、私と長尾先生とは共通の恩師を持ったことになります。

 前田研究室の特徴は多様な研究テーマと多彩な人物のルツボであったことと思います。前田先生は常に新しい研究を新しい門下生と始められるのですが、若い研究者を激励し、その研究が少し走り出すとご本人はさっと手を引いて、先生ご自身の電離層電波伝搬の研究に戻られました。後は、その門下生に新分野の研究は任せて、独り立ちさせてこられました。教師の鏡ともいうべき姿を、私は学生時代に見せていただいたと思います。

 研究室のコンパの思い出と言えば、前田憲一先生はなかなかの「通」で、明治時代に流行した「巡査の引っ越し」、「コンニャクの木登り」などの粋な酒席談義をたくさん聞かせていただきました。これらを通してそれまで私が抱いていた大学教授のイメージが、鼻もちならぬ衒学主義のこちこちから、人間味のある幅広い知的リーダーへと変わっていったのです。

 次回はもう一人の恩師大林辰蔵先生について書いてみたいと思います。

(次号へ続く)


◆理学研究科修士1回 浅野宏幸

 私が京都大学への進学を決意したそもそもの理由は、京都大学の附置研究所の一つである霊長類研究所に強い憧れを抱いていたからでした。小さいころから動物が好きだったこともあり、高校2年生の時には将来は野生動物の研究をしてみたいと思うようになっていました。

 しかし、京都大学理学部に進学し様々な講義を受けるうち、少しずつ自分の興味が変わっていきました。大学に入学した頃は野外の生物を研究するフィールドワークだけに興味を持っていたのですが、次第に、遺伝子やタンパク質のレベルまで踏み込んで生物の中で起こる事象をとことん突き詰めていく分野の研究(ミクロな生物学)に対しても魅力を感じるようになっていきました。様々な分野の研究を広く浅く学んでいくうちに出会ったのが、現在の私の専攻分野である、「時間生物学」と呼ばれる分野です。

 「時間生物学」とは、生物が時間の流れに伴う環境の変化にどのように適応しているのかを研究する学問分野です。生物は時間の流れに逆らえません。地球の自転を遅くして一日を長くすることも、地球の公転を止めて季節の変化を止めることもできません。時間が永遠に流れていくこの世界で生きていくために、多くの生物は時間の流れに合わせる仕組みを体の中に備えています。私が特に興味を持ったのは、生物が約24時間の安定した周期で活動する概日時計システムで、現在はその仕組みがどのような過程を経て進化してきたのかを研究しています。

 現在は、毎日のように大学の研究室でひたすら実験・データの解析をするという、大学入学当時では全く考えられなかったような生活を送っています。まだまだ未熟で失敗も多いですが、それでも研究を通じて、生物が見せる美しいリズムやその不思議を目の当たりにすることができ、この道に足を踏み入れて本当によかったと思っています。

 京都大学理学部・理学研究科で学び、非常に多様な分野の学生や先生方と出会うことで、自分の視野を広げることができました。大変感謝しています。その感謝の意味も込めて、今後も研究に励んでいきたいと思っています。


◆大学の動き◆

○経営管理大学院は建国大学経営学研究科および同大学商科経済学院と教育学術交流協定を締結しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/111019_1.htm

○総合博物館開館10周年記念企画展「埃及考古-ペトリーと濱田が京大エジプト資料に託した夢-」を開催中
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/111025_1.htm

○文部科学省事業「リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備(リサーチ・アドミニストレーションシステムの整備)」に採択されました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/111007_2.htm

○ブータン上院議院ペンジョール議長一行との懇談会を開催しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110930_2.htm

○中村輝石 理学研究科博士1回生が、Charpak賞を受賞しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/111012_1.htm

○平成23年度湯川記念財団・木村利栄理論物理学賞 受賞者を発表
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/111011_2.htm

○シンガポール同窓会(洛星会)の発足式が行われました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110923_1.htm

○中辻憲夫 iCeMS拠点長が、世界幹細胞サミット全体会議で講演しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/111005_3.htm

○科学技術振興機構「戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)「問題解決型サービス科学研究開発プログラム」」に本学より2件採択されました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110928_1.htm

○「イノベーション・ジャパン2011-大学見本市」および「第10回産学官連携推進会議」に参加しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110922_2.htm

○UC Davis Extension(米国)での実習型・夏季短期留学プログラムを実施しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110905_1.htm

○博士学位授与式を挙行しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110926_1.htm

○ 第39回左京自衛消防隊訓練大会に出場しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110915_1.htm

○本学からの聴講生がKCJS 2011秋学期のオリエンテーションに参加しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110901_2.htm

○京都大学地域講演会(愛媛講演会)および京都大学愛媛同窓会と本学との交流会を開催しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110918_1.htm

○栄誉
・柳田充弘名誉教授の文化勲章受章が決定
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/111025_2.htm

・玉尾皓平名誉教授が文化功労者に選ばれました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/111025_3.htm


◆研究成果◆

○新しい聴覚器機開発に関する研究
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/111025_1.htm

○光でデザインするテラヘルツデバイス
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/111018_1.htm

○脳脊髄液プロテオミクスパターン解析手法を用い多発性硬化症関連疾患の鑑別が可能になった
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/111011_1.htm

○二次元空間に「最強電子ペア」をもつ超伝導を実現
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/111010_1.htm

○炭素はいつ生まれたか?125億光年彼方の銀河に炭素を発見
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/111006_1.htm

○コレステロールを調節するたんぱく質の立体構造を世界で初めて解明-副作用の少ない、高脂血症や動脈硬化症の治療薬の開発へ-
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/111006_2.htm

○最近の太陽活動について
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110916_1.htm

○新しいポリマー電解質を開発 安全な高電圧リチウムイオン電池が可能に~コロイド結晶型固体ポリマー電解質を用い、室温で充放電可能なバイポーラ型高電圧リチウムイオン電池(6V駆動)を実現~
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110929_1.htm

○室温で電圧による磁力のスイッチに成功~スピンデバイスの電気的制御手法に新たな道~
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/111003_1.htm

○神経回路の混線を防ぐしくみを解明:非典型的カドヘリンFlamingoと細胞内足場タンパク質Espinasによる協働作用
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110927_2.htm

○微生物(C1酵母)は植物葉上に浸み出したアルコールを夜に飲む~細胞センサーの開発と植物葉上のメタノール変動~
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110927_1.htm


◆イベントのお知らせ◆

○京都大学シンポジウムシリーズ 「大震災後を考える」 -安全・安心な輝ける国づくりを目指して-
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110714_1.htm

○京都大学春秋講義
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h8/d2/news4/2011/111130_1.htm

○第18回品川セミナー「「森里海連環学」をとおして日本の自然を再考する」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/111104_1.htm

○「第11回京都大学地球環境フォーラム」地域・学校を通じた防災コミュニケーション
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/111105_2.htm

○平成23年度エネルギー科学研究科公開講座「新世代のエネルギー源とエネルギー環境」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/111105_1.htm

○「関西3大学学長シンポジウム「日本復興へ、関西の知の役割」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news5/2011/111025_1.htm

○レクチャーシリーズno.95 ジュニアレクチャー「地球の重力を測る」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/111112_1.htm

○フィールド科学教育研究センター 別寒辺牛川地域連携講座「森から海へ~海域環境の保全と人のくらし~」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/111112_3.htm

○第6回 京都大学ホームカミングデイ
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h8/d2/news4/2011/111112_1.htm

○市民公開講座 難聴研究と臨床の最前線:「聞こえ」を守り、育てる
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/111112_2.htm

○第183回アフリカ地域研究会
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/111117_1.htm

○世界の友達と交流できる!パンゲア アクティビティ
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/111119_3.htm

○第4回サービス・イノベーション国際シンポジウム「日本の高品質サービス-和のかたち・和のこころ-」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/111119_1.htm

○11月祭
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/111126_1.htm

○京都府/京都大学こころの未来研究センター 共同企画シンポジウム「ワザとこころ~葵祭から読み解く~」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/111123_1.htm

○京都大学こころの未来研究センターシンポジウム「沖縄・久高島のワザとこころ~その過去と現在」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/111124_1.htm

○平成23年京都大学 鹿児島講演会「おいしさの科学-おいしさを数式で表す試み」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/111126_2.htm

○T2Kシンポジウム2011
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/111130_1.htm

>>その他のイベント情報はこちらをご覧ください。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja?type=monthly&;c2=1


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