「京都de冬の大学トーク」を開催しました。(2019年11月29日)

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「大学と社会が拓く未来の知」の第8回として、「モノが語る歴史-今をときめく考古の世界」をテーマに「京都de冬の大学トーク」を、文学部新館にて開催しました。

本イベントは、大学の教育・研究の成果を広く一般の方々と共有することを目的とし、最新の研究成果を書籍の形で社会に発信している京都大学学術出版会、および文学研究科附属文化遺産学・人文知連携センターとの共催、および読売新聞社、活字文化推進会議の後援により、講演と討論の形で実施したもので、約40名の参加がありました。

前半の部では内記理 文学研究科助教が、「考古学がくつがえすガンダーラ美術の常識」と題して、本学がアフガニスタン・パキスタンなどで行ってきた考古学調査の成果を紹介しながら、歴史的な常識が覆されるダイナミズムをガンダーラ美術や寺院建築から解説しました。その事例として、中央アジアに栄えたクシャーン朝(1-3世紀)のヴァースデーヴァ王を挙げ、「不甲斐ない王」としてその治世の歴史的評価が低かった王が、当時の寺院建築の補修状況や出土する貨幣の様子から実は豊かな王国を築いていたことがわかり、また、その時代の仏教彫刻の様式が日本まで伝播していた影響力の大きさを示し、新たな視点を提示しました。

金宇大 滋賀県立大学准教授は、「古墳時代の金工職人はどこからやってきたのか」をテーマに、日本と朝鮮半島との人的・文化的交流の多様性を示しました。古墳時代には日本は百済と友好関係にあり、新羅と敵対的であったという定説に、金准教授は新たに「加耶」諸国との交流に着目し、古墳時代の百済風の刀の製作技法や装飾のデザインの違いを丹念に追い、実は、技術をもたらしたのは百済ではなく、新羅に滅ぼされた加耶諸国の職人たちではなかったかという説を提唱し、人的交流の新たな可能性を描きました。

後半の部では、内記助教・金准教授の講演を受けて、2人の本学での指導教官であった吉井秀夫 文学研究科教授が、本学における考古学研究の歴史を、1916年の考古学研究室設立時からの研究蓄積ともに紹介しました。

その後、講演者3名で討論を行い、考古学を志したきっかけとなったモノとの出会いや、調査地でモノを見るために現地の人たちと幾度も交流を重ねたこと、また、紛争の間にモノが破壊されていくという状況のなかでも調査を続けてきたことなどが語られました。講演者の考古学者としての情熱と歴史への真摯な眼差しに、参加者は熱心に討論に耳を傾けていました。

左から、内記助教、金准教授、吉井教授

会場の様子