研究成果

脳の「スイッチ」にピンポイントで作用する薬剤候補を開発 -すぐに効いて副作用のない精神・神経疾患の治療法としての応用に期待-


2020年07月09日


     井上謙一 霊長類研究所助教は、量子科学技術研究開発機構、米国ノースカロライナ大学、米国マウントサイナイ医科大学、慶應義塾大学と共同で、既存薬よりも性能と安全性を大幅に高めた人工受容体作動薬候補DCZを開発しました。

     今回の人工受容体作動薬DCZの開発によって、既存作動薬の約1/100の量で標的の神経細胞の「スイッチ」を安全かつ素早く切り替えられるようになりました。さらに、記憶を担当するサルの前頭前野の神経細胞に「スイッチ」を導入し、DCZを投与することで記憶を繰り返し「オフ」にすることに世界で初めて成功しました。

     本研究成果は、代表的な実験動物であるマウスや、ヒトへの応用前段階の試験で重要視されるサルでの有効性が確認できたことから、今後、脳機能や精神・神経疾患の基礎研究に大きく貢献することが期待されます。また臨床応用の観点からも意義は極めて大きく、例えばてんかんの治療では、異常興奮の原因となる神経細胞にだけ「スイッチ」を導入し、症状が出始めた時にすぐにDCZを投与することで、素早くかつ副作用を起こさずに症状を緩和する、などといった応用が考えられます。

     本研究成果は、2020年7月7日に、国際学術誌「Nature Neuroscience」のオンライン版に掲載されました。

    図:本研究の概要図

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41593-020-0661-3

    Yuji Nagai, Naohisa Miyakawa, Hiroyuki Takuwa, Yukiko Hori, Kei Oyama, Bin Ji, Manami Takahashi, Xi-Ping Huang, Samuel T. Slocum, Jeffrey F. DiBerto, Yan Xiong, Takuya Urushihata, Toshiyuki Hirabayashi, Atsushi Fujimoto, Koki Mimura, Justin G. English, Jing Liu, Ken-ichi Inoue, Katsushi Kumata, Chie Seki, Maiko Ono, Masafumi Shimojo, Ming-Rong Zhang, Yutaka Tomita, Jin Nakahara, Tetsuya Suhara, Masahiko Takada, Makoto Higuchi, Jian Jin, Bryan L. Roth & Takafumi Minamimoto (2020). Deschloroclozapine, a potent and selective chemogenetic actuator enables rapid neuronal and behavioral modulations in mice and monkeys. Nature Neuroscience.


    脳の「スイッチ」にピンポイントで作用する薬剤候補を開発 -すぐに効いて副作用のない精神・神経疾患の治療法としての応用に期待-
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