超伝導体テラヘルツ光源の同期現象を初めて観測 -テラヘルツ量子通信デバイスの創成につながる新発見-

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掛谷一弘 工学研究科准教授、辻本学 筑波大学助教らの研究グループは、超伝導体テラヘルツ光源の同期現象の観測に成功しました。

超伝導体の結晶中に発生する特殊な超伝導プラズマ波が光子(フォトン)に変換される現象が注目されています。これまでの研究で、基板上に並べられた複数の光源から、高強度かつ位相のそろったフォトンが一斉に放射される現象が観測されていたものの、その仕組みは明らかにされていませんでした。

今回、本研究グループは、放射されたフォトンの偏波状態を調べることでこれを解明し、巨視的なスケールで位相同期が生じる際には偏波状態に特徴的な変化が現れることを発見しました。また、量子力学に基づいた数値解析によって、超伝導体中のプラズマ波とフォトンが結合する原理を明らかにしました。この成果は、超伝導体中のプラズマ波を制御する技術に応用できることに加え、次世代のテラヘルツ無線通信や分光技術に有用な量子通信デバイスの創成に役立ちます。

本研究成果は、2020年5月13日に、国際学術誌「Physical Review Applied」のオンライン版に掲載されました。

図:(a)基板上に作製した2つの超伝導体光源の顕微鏡写真(b)同期した2つの超伝導体光源の概念図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1103/PhysRevApplied.13.051001

M. Tsujimoto, S. Fujita, G. Kuwano, K. Maeda, A. Elarabi, J. Hawecker, J. Tignon, J. Mangeney, S.S. Dhillon, and I. Kakeya (2020). Mutually Synchronized Macroscopic Josephson Oscillations Demonstrated by Polarization Analysis of Superconducting Terahertz Emitters. Physical Review Applied, 13(5):051001.