スピンを用いた新しい論理演算デバイスの室温動作実証に成功 -次世代論理演算デバイスの実現に向けて大きく前進-

ターゲット
公開日

安藤裕一郎 工学研究科 特定准教授、白石誠司 同教授の研究グループは小池勇人 TDK株式会社 テーマリーダー、鈴木義茂 大阪大学 教授らと共同で、スピンの流れ(スピン流)を用いた「スピン流論理演算デバイス」の室温動作実証に成功しました。

スピンとは電子が有する磁石の性質であり、上向き、下向きの2種類が存在します。スピンの向きが揃った電子の流れは「スピン流」と呼ばれ、エネルギー消費の極めて少ない情報輸送や新しい演算手法の担い手として期待されています。これまでに開発されてきたスピン流デバイスは従来の電子デバイスにスピン機能を付加するものが主流でした。この場合、従来デバイスの一部をスピン流デバイスで置き換えることになりますが、複数のデバイスの組み合わせで実行する論理演算回路の動作原理は従来手法を踏襲するのが一般的でした。その結果、回路全体として期待できる性能向上も限定的でした。

本研究ではスピン流で論理演算を行う「スピン流論理演算デバイス」を実現したものです。これまでのスピン流デバイスと異なり、より高度な論理演算をスピン流が担うことになり、集積度、計算速度、省エネルギーの飛躍的な向上が期待できます。スピン流を用いた次世代情報デバイスの実現に向けた重要な一歩だと考えられます。

本研究成果は、2020年4月7日に、国際学術誌「Physical Review Applied」のオンライン版に掲載されました。

図:(左)スピン流論理演算デバイスの概念図(右)室温動作の結果

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1103/PhysRevApplied.13.044010

Ryoma Ishihara, Yuichiro Ando, Soobeom Lee, Ryo Ohshima, Minori Goto, Shinji Miwa, Yoshishige Suzuki, Hayato Koike, and Masashi Shiraishi (2020). Gate-Tunable Spin xor Operation in a Silicon-Based Device at Room Temperature. Physical Review Applied, 13(4):044010.

  • 日刊工業新聞(6月3日 21面)に掲載されました。