骨再構築(リモデリング)のシミュレーション実験基盤を開発 -骨疾患と薬物治療の効果の予測を目指して-

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安達泰治 ウイルス・再生医科学研究所 教授、亀尾佳貴 同助教、宮雄貴 同修士課程学生らの研究グループは、中島友紀 東京医科歯科大学 教授、林幹人 同助教らの研究グループと共同で、コンピュータ内に構築した仮想的な骨にさまざまな実験操作を加え、その再構築(リモデリング)の過程を詳細に観察できる骨リモデリングのシミュレーション実験基盤「V-Bone」を開発しました。

骨の構造と機能は、よく制御された骨吸収と骨形成の代謝バランスによって維持されています。この骨リモデリングの詳細な分子・細胞メカニズムについては、これまで多くの研究が行われてきました。しかし、骨代謝に関与する細胞間のシグナル伝達の経路はあまりに複雑なため、骨疾患時や薬物治療の過程において、リモデリングによる骨の形態変化を予測することは非常に困難でした。

本研究では、まず、開発したV-Boneを用いて、網目状の海綿骨力学的な荷重に応じてその構造を適応させるという古くから知られた現象に加え、骨粗しょう症や大理石骨病などの骨疾患の病態をコンピュータ内で再現することに成功しました。また、V-Boneにより、特定のシグナル分子の発現を任意に変動させて骨代謝への影響を調べるコンピュータ内( in silico )実験が可能になりました。更に、臨床応用としてV-Boneによる in silico 投薬実験は、骨疾患に対するさまざまな薬物治療の効果の予測に有用であることを示しました。

V-Boneを用いた in silico 実験は、従来の生体内( in vivo )実験や試験管内( in vitro )実験と並ぶ新たな研究手法として、今後の骨代謝研究の発展を推進させると考えられています。また同時に、網羅的な薬剤評価や効果的な投薬方針の策定などを促す臨床支援ツールとして、将来の医療への多大な貢献が期待されます。

本研究成果は、2020年3月7日に、国際学術誌「Science Advances」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究のイメージ図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1126/sciadv.aax0938

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/245925

Y. Kameo, Y. Miya, M. Hayashi, T. Nakashima and T. Adachi (2020). In silico experiments of bone remodeling explore metabolic diseases and their drug treatment. Science Advances, 6(10):eaax0938.