シャム猫のような体色パターンをもつマントヒヒの遺伝子変異を同定 -メラニン合成を担う酵素の遺伝子が変化-

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古賀章彦 霊長類研究所 教授、久川智恵美 わんぱーくこうちアニマルランド 飼育係長、吉澤未来 同園長の研究グループは、シャム猫のような独特な体色に変化したマントヒヒについて、色素合成に関わる遺伝子に生じている変化を同定しました。

わんぱーくこうちアニマルランド(高知県高知市)で1994年に誕生したマントヒヒ「シーマ」は、誕生時点では身体全体が真っ白でしたが、2歳頃から部分的に色が着きはじめ、大人になった現在では、シャム猫のように手足の先と尾が灰色で、顔にも少し着色があります。シャム猫の体色は、メラニン合成を担う酵素チロシナーゼを作る遺伝子の変異が原因です。そのため、本研究グループは、シーマのチロシナーゼ遺伝子の塩基配列を解析し、通常の体色を持つマントヒヒと比較しました。

その結果、シーマはチロシナーゼ遺伝子に変異があり、そのためチロシナーゼの365番目のアミノ酸が、アラニンからトレオニンに変化していることが分かりました。チロシナーゼ遺伝子の363番目と367番目は酵素の機能にとって重要な場所であるため、この365番目の変異がシーマの独特な体色の原因になっていると考えられます。

本研究成果は、2020年2月13日に、国際学術誌「Genome」にオンライン版に掲載されました。

図:シャム猫(左上)のような体色に変化したマントヒヒの「シーマ」(シーマの写真: 古賀章彦

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1139/gen-2020-0003

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/250995

Akihiko Koga, Chiemi Hisakawa, Miki Yoshizawa (2020). Baboon bearing resemblance in pigmentation pattern to Siamese cat carries a missense mutation in the tyrosinase gene. Genome, 63(5), 275-279.

  • 読売新聞(4月12日 19面)に掲載されました。