サンゴの白化・絶滅を防御する天然の化合物を発見 -サンゴの共生バクテリアが放出する天然色素が褐虫藻のストレス耐性を上げる-

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植田充美 農学研究科教授、元根啓祐 農学研究科・日本学術振興会特別研究員らの研究グループは、サンゴの白化・絶滅を防ぐ天然の化合物を、サンゴに共生するバクテリアが生合成していることを発見しました。

近年、地球温暖化に伴う海水温上昇などによりサンゴが大量に白化・死滅し、サンゴ礁に生息する多様な生態系をも脅かしています。この白化現象は、熱や光といった環境ストレスのために、サンゴに共生する褐虫藻の光合成系が機能不全に陥り、活性酸素種が過剰に産生され、褐虫藻が離脱することによって起こります。

本研究は、白化現象の原因を分子レベルで解明するため、褐虫藻の熱ストレスおよび光ストレス耐性を向上させている共生バクテリアを単離し、ゲノム解析と代謝物分析を行いました。その結果、この共生バクテリアが、天然色素カロテノイドの一種で、強力な抗酸化性を持つゼアキサンチンを生合成していることを見出しました。このゼアキサンチンを褐虫藻に対して投与したところ、活性酸素種の生産量が減少したことから、白化現象をゼアキサンチンにより防御できることが判明しました。ゼアキサンチンは、陸上植物にも多く見られるカロテノイドであり、生合成と海洋散布が可能であるため、実地実験に移行すれば海洋資源の保護に大きく貢献できるものと期待されます。

本研究成果は、2020年1月22日に、国際学術誌「mBio」のオンライン版に掲載されました。

図:(左)健康なサンゴ。(右)白化(絶滅前)のサンゴ。

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1128/mBio.01019-19

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/245436

Keisuke Motone, Toshiyuki Takagi, Shunsuke Aburaya, Natsuko Miura, Wataru Aoki, Mitsuyoshi Ueda (2020). A Zeaxanthin-Producing Bacterium Isolated from the Algal Phycosphere Protects Coral Endosymbionts from Environmental Stress. mBio, 11: e01019-19.

  • 読売新聞(5月19日 25面)に掲載されました。