難治性の傷を治す人工タンパク質を開発 -産官学連携で医師主導治験を経て企業治験へ-

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野田和男 医学研究科 助教らは、三洋化成工業株式会社と共同で、慢性創傷を治療する目的で新規治療材料シルクエラスチンスポンジを開発しました。

近年、糖尿病患者の増加あるいは高齢化に伴い、糖尿病性皮膚潰瘍等に代表される治りにくい創傷(慢性創傷)の増加が問題となっています。慢性創傷ではさまざまな原因で治癒が遅れ、細菌に感染し、更に治癒が遅れる悪循環になります。

今回開発した新規治療材料は人工タンパク質シルクエラスチンで作製されており、感染しやすい慢性創傷に対しても有効な材料であることを動物実験等で確認しました。その後、本学医学部附属病院で2018年2月から12月まで、下腿難治性皮膚潰瘍を対象として、シルクエラスチンスポンジを用いた医師主導治験を行い、本材料の安全性を確認しました。この医師主導治験の成果を受けて、2020年1月から企業治験を開始することが決定しました。

この企業治験は、2020年1月から2022年3月までの開発期間(予定)に、三洋化成工業株式会社が中心となり本学および広陵化学工業株式会社とともに、本材料の有効性を確認する目的で実施されます。4年以内に本材料を新規医療機器として承認を得ることを目標に、事業化に向けた開発を推進します。

図:シルクエラスチンスポンジを用いた医師主導治験

詳しい研究内容について

書誌情報

  • 朝日新聞(2月6日 25面)、日本経済新聞(1月24日 39面)、毎日新聞(2月3日夕刊 9面)および読売新聞(1月23日夕刊 8面)に掲載されました。