動画撮影で橋のたわみと車両重量をもとに劣化を推定する「橋梁劣化推定AI」を開発 -カメラによる手軽な点検・診断で老朽化したインフラの早期補修・長寿命化を促進-

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金哲佑 工学研究科教授は、株式会社NTTドコモと共同で、橋梁を走行する車両と、車両通過時に発生する橋のたわみや揺れを同時に動画で撮影し、人工知能(AI)で橋の劣化を推定できる「橋梁劣化推定AI」を世界で初めて開発しました。

国内では10~30m程度の長さの橋梁が多くを占め目視や打音による点検が一般的ですが、技術者の技量により判断が異なることが多く、さらには経験豊富な技術者の不足や足場の設置を必要とするなど点検コストが高いという課題があります。近年ではドローンなどを活用し表面のひびわれや腐食などを画像解析から検出する橋梁点検が進められていますが、表面にひびなどが現れる時点ですでに重大な損傷になっていることが多く、老朽化が進んでいるインフラを効率よく点検する技術や早期補修のために劣化推定ができる技術の開発が求められています。

本技術は、橋梁と橋梁上を走行する車両を動画撮影し、車両の重量を推定したうえで、橋梁の複数点のたわみ(変位)から橋梁が劣化しているかをAIで推定します。橋のたわみは劣化だけでなく、車両の重量によって影響をうけるため、車両の重量を推定したうえで橋のたわみを解析することが、劣化を正しく推定することにつながります。また、車両通行量や設置環境などそれぞれの橋梁の状況が異なるため、定期点検やモニタリングで橋梁ごとのデータを蓄積することで、AIでの劣化推定精度がより向上していくことが期待されます。

今後は、橋梁点検や劣化診断作業への有効性や検出精度の検証を進め、2022年ごろまでの本技術の実用化、そして将来的には本技術を活用した橋梁の維持管理の実現をめざします。また、来る5G時代には、4Kや8Kなどの高精細で大容量の動画を低遅延で送信することで、より精度の高い橋梁点検を実現することが可能になります。

2019年12月9日から2020年9月30日に、富山市の八尾大橋において、橋梁劣化をAIで推定する実証実験が行われる予定です。