ボノボの集団間において、オス間には競合関係があるがメスは寛容で協力的な関係をもつことを解明

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徳山奈帆子 霊長類研究所博士課程学生(現・総合研究大学院大学・日本学術振興会特別研究員)、坂巻哲也 同研究員、古市剛史 同教授の研究グループは、コンゴ民主共和国ルオー科学保護区において野生のボノボを4年間にわたって観察し、攻撃交渉のパターンを集団内で起こったものと集団間のもので比較した結果、集団の異なるオス同士にはメスを巡る競合が存在するが、メス同士は集団が違ってもお互いに寛容であることを発見しました。さらに、攻撃的な行動をしたオスに対して、集団の異なるメス同士が協力して攻撃を加えることもあり、メスは集団を越えた協力関係を築くことができることもわかりました。

ヒトの集団間関係の進化、特に「戦争」の起源を考える上で、しばしばチンパンジーの集団間関係との比較が行われてきました。チンパンジーの集団同士は非常に敵対的で、時には他集団の個体を殺すこともあります。しかし、チンパンジーと同じくヒトと進化的に最も近縁なボノボにおいては、集団間の激しい攻撃的な交渉は見られず、それどころか異なる集団の個体同士が混ざり合って共に採食をしたり、親和的な交渉を行ったりします。

ボノボは集団内でメスが社会的に高い地位をもつことが知られています。そのため、集団間のオス同士に競合関係があっても、メスの意思決定が優先されて平和的な集団間関係が保たれていると考えられます。

本研究成果は、2019年10月6日に、国際学術誌「American Journal of Physical Anthropology」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究により、ボノボのメスは、異なる集団間でもお互いに寛容な行動を取ることが明らかになった

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1002/ajpa.23929

Nahoko Tokuyama, Tetsuya Sakamaki and Takeshi Furuichi (2019). Inter‐group aggressive interaction patterns indicate male mate defense and female cooperation across bonobo groups at Wamba, Democratic Republic of the Congo. American Journal of Physical Anthropology, 170(4), 535-550.