ハンドウイルカがおたがいに協力しあうことを発見

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山本知里 霊長類研究所・ 日本学術振興会特別研究員、友永雅己 霊長類研究所 教授、酒井麻衣 近畿大学 講師、大塚美加 かごしま水族館 主査、柏木伸幸 同飼育員の研究グループは、ハンドウイルカがおたがいに動きのタイミングを調整することで協力しあい、問題を解決できることを明らかにしました。

本研究では、平田聡 野生動物研究センター 教授がチンパンジーの協力行動を調べるために開発したひも引き課題をイルカ用に応用した課題を導入しました。この課題は、台に通されたひもの両端を2個体が同時に引くと台の上に置かれたボール(報酬)を得ることができるというものです。かごしま水族館に暮らすハンドウイルカを対象に、この課題を用いて、2頭のイルカが別々のタイミングでこの装置の方に泳ぎだした時、どのようにお互いの行動を調整するのかを調べました。

その結果、先に泳ぎだした個体は後から来た個体を待ってからひもを引くことがわかりました。さらに、後から来た個体は先に出発した個体との時間的なズレにあわせて泳ぐ速さを変えていることも明らかとなりました。また、2頭がひもを引くタイミングの差が徐々に短くなることもわかりました。これらの結果から、ハンドウイルカは2本のひもを一緒に引く必要性を認識し、2頭がおたがいに行動を合わせているのだと言えます。

本研究成果は、協力行動が哺乳類の中でどのように進化してきたのかを知るための、重要な知見であると考えられます。

本研究成果は、2019年10月2日に、国際学術誌「PeerJ」に掲載されました。

図:実験に用いた装置(左)とロープを一緒に引くイルカたち(右)

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.7717/peerj.7826

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/244386

Chisato Yamamoto, Nobuyuki Kashiwagi, Mika Otsuka, Mai Sakai and Masaki Tomonaga1 (2019). Cooperation in bottlenose dolphins: bidirectional coordination in a rope-pulling task. PeerJ, 7:e7826.