神経信号からニューロンのつながりを高精度で推定する解析法を開発 -神経活動データから脳の回路図を描く-

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篠本滋 理学研究科 准教授、小林亮太 国立情報学研究所 助教は、理化学研究所、立命館大学、大阪市立大学、独・ユーリヒ研究所、米国立衛生研究所の研究者と共同で、神経活動データからその背後にある脳神経回路を高精度で推定する解析法を開発しました。

計測技術の進展により、神経科学においては多数のニューロンの信号を長時間にわたって計測できるようになりました。神経活動にはニューロン間のつながりが影響するため、計測された神経信号を分析すれば結合を推定することができるはずです。この考え方は50年以上前から提案されていましたが、信号にはシナプス結合の影響だけではなく、周囲のニューロンの影響や外部信号の影響も加わっているため現象が複雑で、これまでには信頼性の高い推定は得られていませんでした。

本研究では機械学習理論で発展した一般化線形モデルを用いて外部の影響を消し去り、ニューロン間のシナプス結合(脳の回路図)を把握することに成功しました。大規模シミュレーションデータや実験データに適用した結果、新手法が従来手法に比べてはるかに高い推定精度を有することを確認しました。

最新の計測技術を駆使して様々な脳領野から多くの神経信号が計測され始めているため、この解析法によって各脳領野における情報の流れと情報処理の様式が明らかにされていくと期待されます。解析プログラムは研究者が自由に使えるように公開されており、Webアプリケーションも提供されています。

本研究成果は、2019年10月2日に、国際学術誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載されました。

図:並列計測される神経スパイク信号に本研究の解析プログラム「GLMCC」(Generalized Linear Model for Cross Correlation)を適用することにより脳の回路図を得ることができる

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41467-019-12225-2

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/244205

Ryota Kobayashi, Shuhei Kurita, Anno Kurth, Katsunori Kitano, Kenji Mizuseki, Markus Diesmann, Barry J. Richmond & Shigeru Shinomoto (2019). Reconstructing neuronal circuitry from parallel spike trains. Nature Communications, 10:4468.