類人猿が他者の行動を予測するのに自己経験を用いることを発見 -トリック目隠しと動物の認知-

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狩野文浩 高等研究院 特定准教授、 平田聡 野生動物研究センター教授、友永雅己 霊長類研究所教授、 クリストファー・クルペンイェ 英国・セイント・アンドリュース大学 研究員、ジョセップ・コール 同教授らの研究グループは、類人猿が他者の行動を予測するのに自己経験を用いることを発見しました。

私たちヒトは他者の目的や意図など心の状態を読み、社会生活に生かすことができます。この能力のことを「心の理論」といいます。この能力がヒト以外の動物においても認められるか、長年の議論が続いています。以前から当該分野では、この能力があることを証明するために、自己と他者の心の状態の関連性の理解能力を証明することが重要であると指摘されていました。

本研究では、類人猿に、見た目は同一で性質の異なる二つの衝立 (目隠し) を経験させた後で、その衝立をした他者が、どのようにふるまうか予測させました。類人猿は、衝立に関する自己の経験をもとに他者のふるまいを予測することができました。これによって、類人猿にもヒトと同様の「心の理論」があることを示唆する証拠が得られました。

本研究成果は、2019年10月1日に、国際学術誌「PNAS (米国科学アカデミー紀要) 」のオンライン版に掲載されました。

図:類人猿は二つの衝立を経験した後、ストーリー動画をみて、登場人物の行動を視線で予測した。視線はアイ・トラッカーによって、記録された。

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1073/pnas.1910095116

Fumihiro Kano, Christopher Krupenye, Satoshi Hirata, Masaki Tomonaga, and Josep Call (2019). Great apes use self-experience to anticipate an agent’s action in a false-belief test. Proceedings of the National Academy of Sciences, 116(42), 20904-20909.

  • 読売新聞(10月11日夕刊 10面)に掲載されました。