リハビリが脳の回路をダイナミックに変化させ、機能を再建することを証明

ターゲット
公開日

伊佐正 医学研究科教授(高等研究院ヒト生物学高等研究拠点 (ASHBi) 副拠点長・主任研究者)、飛田秀樹 名古屋市立大学教授、石田章真 同講師、小林憲太 自然科学研究機構生理学研究所准教授らの研究グループは、リハビリテーションによる運動機能に直結する神経回路の再編成は、速やかに他の神経回路の活用によってカバーされうることを実証しました。

本研究グループは、脳幹に存在する神経核である「赤核」と「網様体」に着目し、リハビリテーションに伴う両神経核の役割の変化を調べました。

その結果、大脳皮質の運動野から赤核へ伸びる神経線維(運動野-赤核路)が増加している事を発見しましたが、一方で運動野から網様体へ伸びる神経線維(運動野-網様体路)については変化が起こっていませんでした。しかし、ウイルスベクター二重感染法を用いて、リハビリテーション実施時に運動野-赤核路の機能を選択的に遮断した状態におくと、時間経過とともに運動野-網様体路の数が大きく増加しました。この状態で運動野-網様体路の機能を抑制したところ、リハビリテーションによって回復した前肢の運動機能が再び悪化することを証明しました。

本研究成果は、脳の持つ驚くべき柔軟性を示しており、より効率的な脳出血後のリハビリテーション法の開発につながることが期待されます。

本研究成果は、2019年9月11日に、国際学術誌「Journal of Neuroscience」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究の概要図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1523/JNEUROSCI.0649-19.2019

Akimasa Ishida, Kenta Kobayashi, Yoshitomo Ueda, Takeshi Shimizu, Naoki Tajiri, Tadashi Isa and Hideki Hida (2019). Dynamic Interaction between Cortico-Brainstem Pathways during Training-Induced Recovery in Stroke Model Rats. The Journal of Neuroscience, 39(37), 7306-7320.

  • 日刊工業新聞(9月16日 13面)に掲載されました。