ステロイドに代わる外用薬の可能性を提示 -皮膚の酵素の活性化が乾癬をひきおこす-

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櫻井謙次 医学研究科 博士課程学生(現・天理よろづ相談所病院医員)、大日輝記 同准教授らの研究グループは、p38-MAPキナーゼという酵素のはたらきをおさえることが、ステロイドに代わるあらたな外用薬の開発につながる可能性を示しました。

乾癬という慢性の皮膚炎は、刺激を受けやすい場所や加齢で発症しやすくなります。p38-MAPキナーゼは細胞のなかにある酵素で、外からの刺激や加齢によって皮膚で活性化しやすくなることが知られていました。

本研究グループは、マウスの皮膚にp38-MAPキナーゼを活性化させる薬品を塗るだけで乾癬に似た症状を発症することを発見し、皮膚のp38-MAPキナーゼの活性化が発症の十分条件であることをつきとめました。さらに、乾癬の患者から病変部の皮膚を一部とってp38-MAPキナーゼの阻害薬を作用させると、皮膚組織での炎症性物質の産生がおさえられることを発見しました。

本研究成果は、2019年8月1日に、国際学術誌「Journal of Allergy and Clinical Immunology」のオンライン版に掲載されました。

図:マウスの耳の皮膚の変化

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.jaci.2019.06.019

Kenji Sakurai, Teruki Dainichi, Sandra Garcet, Soken Tsuchiya, Yosuke Yamamoto, Akihiko Kitoh, Tetsuya Honda, Takashi Nomura, Gyohei Egawa, Atsushi Otsuka, Saeko Nakajima, Reiko Matsumoto, Yuri Nakano, Masayuki Otsuka, Yoichiro Iwakura, Yenkel Grinberg-Bleyer, Sankar Ghosh, Yukihiko Sugimoto, Emma Guttman-Yassky, James G. Krueger, Kenji Kabashima (2019). Cutaneous p38 mitogen-activated protein kinase activation triggers psoriatic dermatitis. Journal of Allergy and Clinical Immunology, 144(4), 1036-1049.

  • 日刊工業新聞(8月2日 21面)に掲載されました。