炎症が制御される新たなRNA分解メカニズムを解明 -新たな免疫賦活化法の開発に道筋-

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竹内理 医学研究科 教授らの研究グループは、RNAヘリカーゼUPF1によるRNAの構造変化をスイッチとするmRNA分解が、炎症反応の巧妙なブレーキとして機能することと、これがSMG1キナーゼにより活性化されることを解明しました。

病原体感染に対し、マクロファージや樹状細胞などの自然免疫細胞は、炎症性サイトカインを分泌し、炎症を引き起こします。サイトカインの産生量はmRNA産生と分解により厳密に制御されていますが、その詳細な機構は不明でした。

本研究では、UPF1がステムループRNAの構造をほどくことで、Regnase-1というRNA分解酵素による炎症性サイトカインのmRNA切断が開始されることを解明しました。更に、SMG1と呼ばれるキナーゼによるUPF1のリン酸化がRegnase-1とUPF1の安定的な相互作用およびRegnase-1によるRNA分解に必要であることを明らかにしました。SMG1のキナーゼ活性を阻害剤で抑制することで、樹状細胞の成熟を促進し、T細胞活性化能を亢進させることも見出しました。

本研究成果は、過剰もしくは慢性的な炎症で生じる炎症性疾患の病態解明や、ワクチンの効果を高める添加剤(ワクチンアジュバント)の開発など、新たな治療法の開発につながることが期待されます。

本研究成果は、2019年7月22日に、国際学術誌「Nucleic Acids Research」のオンライン版に掲載されました。

図:RNA構造変化のスイッチを介したSMG1-UPF1-Regnase-1経路によるサイトカインmRNA分解制御機構の模式図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1093/nar/gkz628

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/243190

Takashi Mino, Noriki Iwai, Masayuki Endo, Kentaro Inoue, Kotaro Akaki, Fabian Hia,Takuya Uehata, Tomoko Emura, Kumi Hidaka, Yutaka Suzuki, Daron M Standley,Mariko Okada-Hatakeyama, Shigeo Ohno, Hiroshi Sugiyama, Akio Yamashita,Osamu Takeuchi (2019). Translation-dependent unwinding of stem–loops by UPF1 licenses Regnase-1 to degrade inflammatory mRNAs. Nucleic Acids Research, 47(16), 8838-8859.