環形動物も大きな音を鳴らすことを発見 -キムラハナカゴオトヒメゴカイのマウスアタック-

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後藤龍太郎 フィールド科学教育研究センター 助教、平林勲 串本海中公園 主任学芸員、A. Richard Palmer アルバータ大学 教授らの研究グループは、環形動物の1種であるキムラハナカゴオトヒメゴカイが、口を寄せ合って行う特異な種内闘争(マウスファイティング)の際、口吻で相手を弾き飛ばす高速攻撃(マウスアタック)とともに単発の大きな音を出すことを発見しました。

海生哺乳類をはじめ、魚類や甲殻類など、水中で大きな音を出す動物は数多く知られています。しかし、環形動物などの体の大部分が柔らかい構造からなる無脊椎動物では、これまで音を出すものは知られていませんでした。

キムラハナカゴオトヒメゴカイの生成した音は、 水中での音圧レベルは最大で、157デシベル(dB)re1µPa@1mにもおよび、周波数は6.9キロヘルツ(kHz)付近をピークとして、90kHz以上まで幅広い値を示しました。さらに、マウスアタックの際に急速に膨らむ咽頭の形態変化とその筋構造から、音が生成されるメカニズムについても推察しました。

本研究成果は、これまで音を出さない(出せない)と考えられていた柔らかい無脊椎動物であっても、瞬間的に大きな水中音を出せることを初めて示した点において意義深く、無脊椎動物における発音の役割やメカニズムの解明に貢献することが期待されます。

本研究成果は、2019年7月9日に、国際学術誌「Current Biology」のオンライン版に掲載されました。

図:キムラハナカゴオトヒメゴカイのマウスファイティング。体前半部の透けて白く見えている部分が咽頭と呼ばれる器官。

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.cub.2019.05.047

Ryutaro Goto, Isao Hirabayashi, A. Richard Palmer (2019). Remarkably loud snaps during mouth-fighting by a sponge-dwelling worm. Current Biology, 29(13), R617-R618.

  • 朝日新聞(7月12日 34面)および京都新聞(8月23日 1面)に掲載されました。