研究成果

細胞が対称性を破る仕組みを解明 -極性を持たない細胞に非対称性を与える-


2019年07月12日


     河野夏鈴 生命科学研究科博士課程学生(兼・理化学研究所リサーチ・アソシエイト)、松崎文雄 同教授(兼・同チームリーダー)らの研究グループは、細胞極性の形成に働くタンパク質複合体によって細胞に非対称性が生じる際の基本的なプロセスを解明しました。

     「細胞極性」は、細胞に方向性を与える細胞の基本的な性質で、器官や組織を正常に形成するために欠かせない要素です。細胞に極性を作り出すシステムの中でも、Parタンパク質の複合体(Par複合体)による極性形成は、線虫からヒトまで保存され、さまざまな組織で機能する最も一般的なシステムです。しかし、Par複合体の振る舞いや特徴などはモデル生物や組織ごとに異なるため、その普遍的なプロセスは不明でした。

     今回、本研究グループは、Parタンパク質の発現量を操作することで、通常は極性を持たないショウジョウバエ胚由来の培養細胞上に、人為的に非対称的なタンパク質の分布を作り出すことに成功しました。この細胞極性の再構成により、細胞が非対称性を生み出す典型的なプロセスを高解像度で観察可能となり、Par複合体が3段階の動的な凝集状態を経ることが分かりました。これらの凝集体は、ショウジョウバエの個体内の細胞でも存在することが確認されたことから、Par複合体が働く細胞極性の形成に一般的な過程と考えられます。また、凝集状態の最終段階である島状の凝集体を超解像顕微鏡で観察した結果、この凝集体はセグメント状の構造単位が網目状に集まった構造を持つことが分かりました。

     本研究成果は、細胞極性が関わる器官形成・再生や、細胞極性の乱れによって生じるがん化メカニズムの詳細な理解に貢献すると期待できます。

     本研究成果は、2019年6月7日に、国際学術誌「eLife」のオンライン版に掲載されました。

    図:Par複合体(緑)の凝集により培養細胞で非対称性が生まれるまでの概要図

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    【DOI】https://doi.org/10.7554/eLife.45559

    【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/242981

    Kalyn Kono, Shigeki Yoshiura, Ikumi Fujita, Yasushi Okada, Atsunori Shitamukai, Tatsuo Shibata, Fumio Matsuzaki (2019). Reconstruction of Par-dependent polarity in apolar cells reveals a dynamic process of cortical polarization. eLife, 8:e45559.


    細胞が対称性を破る仕組みを解明 -極性を持たない細胞に非対称性を与える-
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