日本で草地が10万年以上維持されてきたことを実証 -近年の草地の激減は地質学的時間スケールで大きな出来事-

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井鷺裕司 農学研究科 教授、山浦悠一 森林研究・整備機構森林総合研究所 主任研究員、永野惇 龍谷大学 准教授、中村太士 北海道大学 教授らは、北海道立総合研究機構森林研究本部、農研機構西日本農業研究センター、京都府立大学、オーストラリア国立大学と共同で、過去10万年間にわたる日本の草地の歴史を植物の遺伝子解析により推測しました。

センブリ、カワラナデシコ、オミナエシ、ワレモコウは数十年前まで、日本のどこでも身近に見られた草地性植物でした。本研究グループは全国各地に残された草地を訪問してこれらの種の葉を収集し、次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析を行いました。その結果、これらの種は過去10万年間にわたって、個体数を数百年前の0.5から2.0倍の範囲で維持してきたことが明らかになりました。本結果は、最近100年間に起きた草地と草地性生物の国内での激減は、千年から万年を単位とする地質学的な時間スケールで見て大きな出来事であることを示しています。

本研究成果は、人類が環境の改変や維持に果たしてきた役割、特に林業や農業が草地を維持してきた役割の歴史的な重要性を示しています。

本研究成果は、2019年5月29日に、国際学術誌「Biology Letters」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究で収集した草地に特化した4種の対象草本植物。(a)センブリ、(b)カワラナデシコ、(c)オミナエシ、(d)ワレモコウ。

詳しい研究内容について

書誌情報


【DOI】 https://doi.org/10.1098/rsbl.2018.0577

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/241653

Yuichi Yamaura, Ayu Narita, Yoshinobu Kusumoto, Atsushi J. Nagano, Ayumi Tezuka,Toru Okamoto, Hikaru Takahara, Futoshi Nakamura, Yuji Isagi and David Lindenmayer (2019). Genomic reconstruction of 100 000-year grassland history in a forested country: population dynamics of specialist forbs. Biology Letters, 15(5):20180577.

  • 朝日新聞(5月29日夕刊 6面)に掲載されました。