iPS細胞樹立時に起こりうる異常の同定とその回避方法の開発 -安全な細胞運命制御技術の開発に向けて-

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山本拓也 iPS細胞研究所 准教授、八木正樹 東京大学 研究員(現・ハーバード大学研究員)、山田泰広 同教授らの研究グループは、マウスおよびヒトのiPS細胞樹立過程をDNAメチル化に着目して解析し、体細胞初期化過程において特定のインプリント制御領域にDNAメチル化異常が起こりうることを示しました。さらに、そのDNAメチル化異常を回避する体細胞初期化方法を見出しました。また、小児がんにおいて体細胞初期化に関連するDNAメチル化異常がしばしば観察されることを明らかにしました。

本研究ではiPS細胞におけるゲノムインプリンティング異常の詳細を示すとともに、その異常を回避する細胞初期化技術の開発に応用できる可能性を示しました。さらには小児がんの発生に体細胞初期化に起こりうる異常が関与している可能性を示しました。

近年、細胞老化を伴う個体の機能低下が様々な疾患の発症に関与していることが明らかになってきました。本研究によって、体細胞初期化により老化細胞の特徴をリセットできることが示され、iPS細胞作製技術は再生医療への応用のみならず、細胞老化の制御にも応用できることが示唆されています。本研究成果は、安全な細胞運命制御技術の開発に貢献することが期待されます。

本研究成果は、2019年5月1日に、国際学術誌「Stem Cell Reports」のオンライン版に掲載されました。

図:様々な多能性幹細胞を樹立し、体細胞初期化過程において特定のインプリント制御領域にDNAメチル化異常が起こりうることを示し、そのDNAメチル化異常を回避する体細胞初期化方法を見出しました。

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.stemcr.2019.04.008

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/241550

Masaki Yagi, Mio Kabata, Tomoyo Ukai, Sho Ohta, Akito Tanaka, Yui Shimada, Michihiko Sugimoto, Kimi Araki, Keisuke Okita, Knut Woltjen, Konrad Hochedlinger, Takuya Yamamoto, Yasuhiro Yamada (2019). De Novo DNA Methylation at Imprinted Loci during Reprogramming into Naive and Primed Pluripotency. Stem Cell Reports, 12(5), 1113-1128.