研究成果

細孔空間を使って異なる分子を交互に配列 -電荷寿命1,000倍、有機太陽電池の究極構造を実現-


2018年04月27日


     北川進 高等研究院物質—細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)拠点長、植村卓史 工学研究科准教授(現・東京大学教授)、北尾岳史 同博士研究員(現・同助教)、らの研究グループは、仏高等師範学校(ENS)の研究グループと協力し、周期性の細孔空間を構造内に有する多孔性物質を利用することで、これまで有機太陽電池の究極的な理想構造とされてきた、二種類の異なる分子が規則的かつ交互に配列した構造体を作り出すことに成功しました。

    研究者からのコメント

     ドナーおよびアクセプター分子は、ナノレベルで組み合わせることで、単独では発現させることができない電荷分離などの機能を示すことから、様々な電子デバイスの核となる構造体として盛んに研究がなされています。本研究では、多孔性金属錯体(MOF)の骨格構造を反映させることで、ドナーとアクセプターの集合状態を分子レベルで合理的かつ緻密に作り出すことができることを初めて実証しました。本成果は、光電子デバイスの高効率化に向けた材料設計に有用な指針を与えるものです。MOFの構造多様性を活かすことで、既存の材料を凌駕するような、新規ドナーアクセプター交互配列構造体の創製が期待されます。また、MOFは薄膜化も可能であるため、太陽電池を作製する上で好適といえます。今後、MOF/ポリマーナノハイブリッド材料を用いて実際にデバイスの作製に取り組んでいく予定です。

    概要

     有機太陽電池の材料として、電子を与える(ドナー)分子と電子を受け取る(アクセプター)分子が規則的かつ交互に配列した究極に理想的な構造体が求められていました。本研究グループは、ドナー分子であるポリチオフェンを、アクセプター分子として知られる酸化チタンを含むMOF内で合成することで、ドナーとアクセプターが分子レベルで規則的かつ交互に配列した構造体を作り出すことに成功しました。その結果、電流の担い手となる電荷の寿命は従来の約1000倍となり、非常に不安定な電荷を飛躍的に安定化させることに成功しました。本成果を応用することで、有機太陽電池をはじめとする様々なエネルギー変換デバイスの高効率化につながることが期待されます。

    図:ドナーアクセプター交互配列構造体のイメージ

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    【DOI】https://doi.org/10.1038/s41467-018-04034-w

    【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/230928

    Sujing Wang, Takashi Kitao, Nathalie Guillou, Mohammad Wahiduzzaman, Charlotte Martineau-Corcos, Farid Nouar, Antoine Tissot, Laurent Binet, Naseem Ramsahye, Sabine Devautour-Vinot, Susumu Kitagawa, Shu Seki, Yusuke Tsutsui, Valérie Briois, Nathalie Steunou, Guillaume Maurin, Takashi Uemura, Christian Serre (2018). A phase transformable ultrastable titanium-carboxylate framework for photoconduction. Nature Communications, 9, 1660.


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