福島第一原子力発電所事故後の川内村における救急搬送の実態調査を実施 -搬送先・搬送時間の変化が浮き彫りに-

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中山健夫 医学研究科教授、高橋由光 同准教授、西川佳孝 同博士課程学生らの研究グループは、南相馬市立総合病院(福島県)、福島県立医科大学などと共同で、福島第一原発事故後の川内村(福島県双葉郡)の救急搬送の実態調査を実施しました。

救急医療へのアクセスは、住民の生活基盤として極めて重要です。しかし、福島第一原子力発電所事故後の避難区域への帰村を考慮した、災害後長期にわたる救急医療アクセスについては、十分な情報がありませんでした。

本研究グループは、川内村における、災害前と帰村後での救急医療アクセスを検討するため、救急搬送例の観察研究を行いました。2009年1月から2015年10月までに川内村から救急搬送された781例のうち、災害後〜避難期間中の84例(2011年3月11日〜2012年3月31日)を除いた災害前281例、帰村後416例を対象としました。

災害前は、双葉郡内の病院に80.4%が搬送されていましたが、災害後に双葉郡の輪番4病院はすべて閉鎖しました。帰村後では、42.3%の救急症例が、川内村が帰村時に協定を結んだ、ひらた中央病院(福島県石川郡平田村)、29.6%が郡山市に運ばれていました。双葉郡の病院閉鎖に伴い、救急搬送時間は延長したものの、郡山市よりも近い平田村で救急医療へのアクセスが確保されました。また、災害前と帰村後では、最初の救急要請から病院到着までの時間は延長したものの、21.9分の増加にとどまっていました。

本研究により、大規模災害時には、区域外の病院との協定は有効である可能性が示されました。

本研究成果は、2019年2月10日に、国際学術誌「BMJ Open」のオンライン版に掲載されました。

図:災害前と帰村後の搬送先地域の変化

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1136/bmjopen-2018-023836

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/236397

Yoshitaka Nishikawa, Masaharu Tsubokura, Yoshimitsu Takahashi, Shuhei Nomura, Akihiko Ozaki, Yuko Kimura, Tomohiro Morita, Toyoaki Sawano, Tomoyoshi Oikawa, Takeo Nakayama (2019). Change of access to emergency care in a repopulated village after the 2011 Fukushima nuclear disaster: a retrospective observational study. BMJ Open, 9(2):e023836.