忘れた記憶を復活させる薬を発見 -既存の薬物で記憶痕跡の再活性化に成功-

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高橋英彦 医学研究科准教授、野村洋 北海道大学講師、池谷裕二 東京大学教授らの研究グループは、脳内のヒスタミン神経系を活性化する薬が記憶に与える影響をマウスとヒトで調べた結果、記憶テスト前にヒスタミン神経系を活性化すると、忘れてしまった記憶でも思い出せるようになることを見出しました。

この薬の働きには、嗅周皮質と呼ばれる脳領域の活動上昇が関わっていること、また、特にもともと記憶成績が悪い参加者ほど薬の効果が大きいことがわかりました。

本研究成果は、脳内ヒスタミンや記憶のメカニズムの解明に有益であると共に、アルツハイマー病などの認知機能障害の治療薬開発の一助となることが期待されます。

本研究成果は、2019年1月8日に国際学術誌「Biological Psychiatry」にオンライン掲載されました。

※ベタヒスチン(ヒスタミン神経系を活性化するヒスタミンH3 受容体逆作動薬)の服用にあたっては医師、薬剤師の指示に従い、自己判断で薬の服用を止めたり、決められた量よりも多く服用したりしないでください。ベタヒスチンの副作用の検討は少人数の試験では検証できないこと、そして処方薬の安易な服用は認められないことから、ベタヒスチンを記憶改善の目的で用いることのないようにご注意ください。

図:「ヒスタミンが神経活動にノイズを加えることで記憶を回復させること」を説明する確率共鳴モデル

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.biopsych.2018.11.009

Hiroshi Nomura, Hiroto Mizuta, Hiroaki Norimoto, Fumitaka Masuda, Yuki Miura, Ayame Kubo, Hiroto Kojima, Aoi Ashizuka, Noriko Matsukawa, Zohal Baraki, Natsuko Hitora-Imamura, Daisuke Nakayama, Tomoe Ishikawa, Mami Okada, Ken Orita, Ryoki Saito, Naoki Yamauchi, Yamato Sano, Hiroyuki Kusuhara, Masabumi Minami, Hidehiko Takahashi, Yuji Ikegaya (2019). Central Histamine Boosts Perirhinal Cortex Activity and Restores Forgotten Object Memories. Biological Psychiatry, 86(3), 230-239.

  • 京都新聞(1月9日 23面)および産経新聞(1月9日 1面)に掲載されました。