地球温暖化への適応策として屋外労働の時間帯変更の効果を推計 -増大する暑熱ストレスに対して時間帯変更のみの効果は限定的-

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藤森真一郎 工学研究科准教授、高倉潤也 国立環境研究所研究員、花崎直太 同主任研究員、本田靖 筑波大学教授らの研究グループは、地球温暖化による暑熱ストレスの増大が屋外の労働者に対して与える影響を軽減するために、労働時間帯を早朝にシフトさせる対策をとることによる効果を検証しました。

本研究の結果、仮に温室効果ガスの排出削減が全く行われずに地球温暖化が進行した場合、21世紀後半に暑熱ストレスのレベルを現状と同程度に保ち、経済的影響を避けるためには世界全体の平均ではおよそ6時間程度、労働開始時間を早める(現在の始業時刻が午前9時であれば、午前3時以前に始業時刻を前倒しする)ことが必要であることが分かりました。この結果は、地球温暖化への対策として労働時間帯の変更だけで対処することは非現実的であり、地球温暖化そのものを防ぐ対策(緩和策)や、労働時間帯シフト以外のさまざまな対策(適応策)との組み合わせが不可欠であることを示唆しています。

本研究成果は、2018年11月21日に、米国の国際学術誌 「Earth’s Future」のオンライン版に掲載されました。

図:熱中症のリスクを避けて作業に従事可能な時間(年間の平均)への影響と影響を避けるために必要な労働時間帯のシフト量

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1029/2018EF000883

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/235250

Jun'ya Takakura, Shinichiro Fujimori, Kiyoshi Takahashi, Tomoko Hasegawa, Yasushi Honda, Naota Hanasaki, Yasuaki Hijioka, Toshihiko Masui (2018). Limited Role of Working Time Shift in Offsetting the Increasing Occupational-health Cost of Heat Exposure. Earth's Future, 6(11), 1588-1602.