サルがヒトと同様の身体姿勢の知覚様式をもつことを解明しました

ターゲット
公開日

藤田和生 文学研究科教授と松野響 法政大学准教授は、ヒト以外の霊長類であるフサオマキザルがヒトと同じように、他者の顔や身体を視覚的に識別する際にその顔や身体の画像を上下さかさまにして見せられると識別が難しくなる現象「身体の倒立効果」を示すことを明らかにしました。

本研究成果は、2018年10月11日に米国の国際学術誌「PLOS ONE」のオンライン版に掲載されました。

研究者からのコメント

身体の知覚認識は、社会的なコミュニケーションを支える重要な機能の一つとして近年の心理学の中で大きな注目を集めています。ヒトと身体的な制約の異なるヒト以外の動物が、どのような知覚認知上の制約を共有し、またどのような種固有の認識様式があるのかを知ることで、私たちの社会的な認知機能の進化的な起源を探っていくことができればと考えています。

概要

倒立効果は、私たちヒトが顔や身体を各パーツの特定の空間配置(頭の下に胴、胴の下に足、という空間配置の制約)に基づいて統合的に知覚していることの証拠であると考えられています。このような他者身体の知覚認識の様式が、直立二足歩行をするヒトに固有のものであるのか、四足で行動するヒト以外の動物とも進化的に共有されたより普遍的な知覚様式であるのかについては、これまで明らかではありませんでした。

本研究では、フサオマキザルがヒトと同様に、二足で直立するヒト身体画像の識別に際して身体の倒立効果を示すことを、フサオマキザル4個体とヒト22人を対象とした「見本合わせ課題」(最初に見た身体画像と同じ画像を選択すれば正解、異なる姿勢の画像を選択すれば不正解)によって示しました。本研究成果は、四足歩行をするヒト以外の動物が、ヒトと同様に身体の統合的な視知覚情報処理をしていることを示し、そのような知覚様式の進化的な起源が約4000万年前にまでたどりうることを示唆するものです。

図:フサオマキザルは、人と同様に身体の「倒立効果」を示す

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1371/journal.pone.0204353

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/234708

Toyomi Matsuno, Kazuo Fujita (2018). Body inversion effect in monkeys. PLOS ONE, 13(10):e0204353.