研究成果

薬剤耐性の原因「薬剤汲み出しタンパク質」の排出メカニズムを解明 -多剤排出トランスポーターMdfAの分子機構-


2018年10月03日


     岩田想 医学研究科教授、野村紀通 同助教、名倉淑子 同研究員、田辺幹雄 高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所特任准教授、寺田透 東京大学准教授、表弘志 岡山大学准教授、宮地孝明 同准教授、樹下成信 同助教らの研究グループは、ドイツ・マルティンルター大学と共同で、細菌の薬剤耐性を引き起こす主な原因である「MFS型多剤排出トランスポーター」が、薬剤を認識して細胞外に排出するメカニズムを明らかにしました。

     本研究成果は、2018年10月1日、米国の科学誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載されました。

    研究者からのコメント

     細菌の抗生物質耐性化による院内感染は大きな社会問題にもなっています。この研究で明らかになった細菌の薬剤排出の仕組みの知見を逆手にとって、細菌の細胞から薬剤を排出させないようにすることにより、薬剤耐性化を抑制する方策の合理的な開発と今後の発展が期待されます。

    概要

     細菌が薬剤耐性を持つ主な原因は、抗菌剤など複数の異なる薬剤を細胞外へ排出する多剤排出トランスポーターですが、薬剤分子を認識して排出する分子メカニズムは明らかになっていませんでした。

     本研究グループは、細胞に多数存在し薬剤排出に重要な役割を担うMFS(Major facilitator superfamily)型の多剤排出トランスポーターのひとつ、MdfAに着目しました。まずMdfAに対して結晶構造解析を行った結果、MdfAの構造解析に成功し、すでに存在の知られていた内開き構造に加えて、初めて外開き構造を明らかにしました。

     また、分子動力学シミュレーションを行ったところ、細胞膜内に存在する特定の酸性残基のプロトン化(分子中の酸性や塩基性の官能基に水素イオンが結合すること)が、外開き構造から内向き構造への引き金となることを明らかにしました。さらに、精製MdfAタンパク質を脂質膜に組み込んだ形で初めて薬剤輸送活性を測定し、薬剤の輸送に重要なアミノ酸残基を明らかにしました。

     本研究により、MdfAが薬剤分子を細胞外に輸送する分子メカニズムの一端を明らかにすることができました。本研究成果は、薬剤分子排出への理解を深め、将来的には、多剤排出トランスポーターの働きを抑えることで、薬剤耐性菌に対抗する治療薬の開発に貢献できると考えられます。

    図:細菌の細胞膜に存在するMFS型多剤排出トランスポーターMdfA

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    【DOI】https://doi.org/10.1038/s41467-018-06306-x

    【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/234663

    Kumar Nagarathinam, Yoshiko Nakada-Nakura, Christoph Parthier, Tohru Terada, Narinobu Juge, Frank Jaenecke, Kehong Liu, Yunhon Hotta, Takaaki Miyaji, Hiroshi Omote, So Iwata, Norimichi Nomura, Milton T. Stubbs & Mikio Tanabe  (2018). Outward open conformation of a Major Facilitator Superfamily multidrug/H+ antiporter provides insights into switching mechanism. Nature Communications, 9:4005.


    薬剤耐性の原因「薬剤汲み出しタンパク質」の排出メカニズムを解明 -多剤排出トランスポーターMdfAの分子機構-
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